Exhibition

ものがたりの予感
【終了しました】 群馬県立館林美術館

GO ON編集人

【展覧会概要】※展覧会概要の下に取材記事を掲載しています

本展は、当館のコレクションを通じて、美術作品における「ものがたり」に注目し、イメージとことばの関係や、それにとらわれない作者の自由な発想を見ていくものです。

展示作品には、グリムなどのよく知られた童話の挿絵、文字と絵が一体となった本、ものがたりを彩るイギリスの美しい装丁本などがあります。また、岡本健彦や勅使河原蒼風の抽象彫刻、西村盛雄のハスの葉をかたどった立体など、一見して何かのものがたりの表現とは見えないなかで、作者の意図や制作の過程にものがたりが息づく作品があります。

さらに、南桂子、山口晃の絵など、具体的ではないけれど、ものがたりを自ずと想像させる作品もあります。展覧会では、コレクションより厳選した版画、油彩画、彫刻、フィギュアのような立体など、 200点以上を4章に分けてご紹介します。

「ものがたり」とその「予感」を愉しみ、アートに親しむ機会となれば幸いです。

エドワード・バーン=ジョーンズ「ヤコブの梯子」『フラワー・ブック』1905年刊より

【展覧会を鑑賞して】

展覧会のタイトルにある『ものがたり』を見つけに会場へ向かう。絵画が中心だと思っていたが、第1章には彫刻作品もあり、ダイナミックな作品の数々に気持ちが昂る。特に勅使河原蒼風の作品に興味を抱いた。いけばな草月流の創始者と書かれているが、彫刻作品もつくるという型にはまらない活動に、芸術に対する力強さを感じた。《ビーナス》は1本の木からつくられている。人体のような形をし、黒光りしたその姿は《ビーナス》という名の通り、人体の美しさと豊かな愛情を感じる作品である。

第2章、3章ではJ.-J.グランヴィルの作品に注目した。ユーモアと不気味さのバランスが絶妙で、クスッと笑ってしまうような作品もあり大いに楽しんだ。J.-J.グランヴィルは19世紀に活躍した風刺画・挿絵画家。『生きている花々』(タクシル・ドロール著)は植物を擬人化しているのだが、かわいらしさの中に毒を感じる『不思議の国のアリス』を彷彿とさせた。『当世風変身譚』では、頭が動物で胴体は人間。リアルすぎるタッチが不気味さを加速させる。絵画に込められた教訓や皮肉を動物に演じさせているらしい。J.-J.グランヴィルの作品は数多く展示されているので、物語を想像しながらじっくりと堪能してほしい。

第4章では南桂子の作品に心惹かれた。1950年〜70年代の作品なのだが、古さを感じない。メルヘンすぎないタッチや人物の涼しげな表情、色味がそうさせるのだろう。

私の『ものがたり』は、人間の皮肉さが滲み出るJ.-J.グランヴィルのような作品が似合うかもしれないと思った。みなさんも、自分の『ものがたり』を想像しながら作品を楽しんでみてはいかがだろうか。

※施設の利用状況に関しては群馬県立館林美術館のWebサイトをご確認ください

Place

群馬県立館林美術館
群馬県立館林美術館

広大な自然の中に佇む群馬県立館林美術館は、どこをとっても絵になる素晴らしいロケーションが魅力的。朝から夕方まで、ゆっくりと過ごしたい場所である。