Exhibition

開館3周年記念展「HOME/TOWN」 太田市美術館・図書館

【展覧会概要】※展覧会概要の下に取材記事を掲載しています

「村の俺達の狼火をあげよう」—太田生まれの詩人・清水房之丞の詩作「霜害警報」(1930年)の一節をキーワードに、この土地の過去と現在を見つめ、未来を語る場として作り上げた開館記念展「未来への狼火」(2017年)から3年。「まちに創造性をもたらす、知と感性のプラットフォーム」を基本理念に開館した太田市美術館・図書館は、複合施設という特徴と、平田晃久によるユニークな建築構造をいかし、現代美術を軸にしながら文学・歴史までも取り入れた実験的な展覧会を積極的に開催してきました。

本展「HOME/TOWN」は、開館3周年を記念し、改めて風土を見つめ直す企画として、詩人・清水房之丞(1903-1964)、美術家・片山真理(1987年生まれ)、写真家・吉江淳(1973年生まれ)の3人展として実施するものです。いずれも太田にゆかりをもつ、亡くなって半世紀以上が経つ詩人と、いまを生きる美術家と写真家の作品群は、時代や形式は異なるものの、ここの土地・歴史・生活を真摯に見つめることによって生み出され、表現としての揺るぎない力を持つに至っています。

さて、このたび、当館が3人のアーティストとともに皆さまを誘うのは、川をそのはじまりとする展覧会です。開館記念展にて当館は、太田の由来が「豊かな田んぼ」を意味するという一説から、土・大地へと眼差しを向け、展覧会のディレクションを行いました。そして、その肥沃な太田の大地は、北には渡良瀬川、南には利根川が流れ、豊かな川のあいだで挟まれるようにして人びとの生活が営まれています。

こちらからあちらへ。あちらからこちらへ。自身の家を起点にして日々繰り返す移動のなかで、何気なく見つめている、いま・ここ。生活者であり表現者である3人の作品から、改めてわたしたちが生きているこの風土の特性に出遭う場所を作り上げ、皆さまと享受したいと思います。
ご案内の終わりに、土と川に育まれた詩人の言葉の一節を。
「村の田圃は雲が湧いた様にまんまんと水だ」 —清水房之丞「村の七月」(『青馬』第1巻第6号より)

【展覧会を鑑賞して】

「改めて風土を見つめ直す企画」と説明にあったが、私は住んでいる街や地元に対してこれといった思い入れがない。はて、作品に入り込めるだろうかと少し不安な気持ちを抱きながら会場へ向かった。

1階の展示室には片山真理、吉江淳の写真、壁面には清水房之丞の詩が展示されている。清水房之丞の詩は、遠くからみると気づかないかもしれないが(ちょっと光沢があると感じるぐらい)、カッティングシートではなく鉄、アルミ素材でできた立体の文字になっている。近くでみるとその質感がおもしろく、文字をデザインするという表現のひとつに、その言葉の持つ意味に合わせた質感で表現する方法もあるのかと感心した。
私は吉江淳の写真が気になった。「地方都市」、「出口の町」は、太田市近郊に住んでいる方なら自然と目にしている風景がずらりと並ぶ。次第に作品を鑑賞するというか「ここはあの場所だな。ここを撮影するとは。私もここは気になる」など、吉江淳に共感するようになった。さらに細かくみて「ここはあそこか!」と場所を当てるゲームのような感覚にさえなった。まるで記憶の確認をするような。これは地元の人間ならではの、鑑賞方法だろう。普段気に留めない場所だからこそ記憶を辿るような、そんな印象を受けた。

2階展示室の片山真理の作品は、足尾銅山を撮影した「ashio copper mine」。彼女の作品はミクスト・メディアの印象があったので、自身がモデルになっていない風景の写真をみるのは初めてだった。足尾銅山と聞くと、公害で枯れた山々が並ぶ「乾いた」イメージがある。しかし、片山真理の足尾銅山の写真には水々しさや生命力を感じた。正直タイトルに「ashio」とついていなければ、どこかの美しい山の風景ではないかと思ってしまう。写真の中に「負夫」という文字が出てくるので、それを見て「ここは銅山なのか」と思うぐらいだ。今後も片山真理の風景写真には注目したい。

足尾銅山の写真も吉江淳の太田市近郊の写真たちと同様、「ここがどこなのか」を知らないと私が感じたような気持ちにはならないかもしれない。しかし、他県の方でもきっと「みたことあるような風景」に出会うだろう。その時に自身の住む街と比較して鑑賞するのも楽しいのではないか。

鑑賞した作品は、私の普段の生活の中で日々目にしている風景であった。意識すると見落とし、無意識のうちにすでに記憶に埋め込められている風景。それが私の思う「HOME/TOWN」であった。

※施設の利用状況に関しては太田市美術館・図書館のWebサイトをご確認ください

https://www.artmuseumlibraryota.jp/

Place

太田市美術館・図書館
太田市美術館・図書館

アート系の本や雑誌、絵本などが揃う幅広い世代の方たちが楽しめる開かれた空間。グリーンのある屋上では、1Fのカフェで買ったドリンクを片手に寛ぐこともできる。