【展覧会概要】※展覧会概要の下に取材記事を掲載しています
イタリアの古都ボローニャで毎年春に開催される、世界最大級の児童書専門の国際見本市「ボローニャ・チルドレンズ・ブックフェア」。出版社、絵本作家、翻訳家など世界各国の児童書関係者が集い、活発な交流や商談が行われます。この見本市に伴って毎年開催されているのが、国際的な絵本原画コンクール「The Illustrators Exhibition」です。応募要件は子どものために描かれた5枚1組のイラストレーションであること。キャリアを問わず誰でも応募できることから、新人イラストレーターたちの登竜門となっています。2020年は66ヵ国2,574組の応募の中から、日本を含む24ヵ国75組(76名)が入選しました。
「イタリア・ボローニャ国際絵本原画展」は、コンクールでの入選作品の数々を日本国内で展観する巡回展です。様々な技法で描かれた個性的で魅力あふれる作品をご覧いただけます。また、特別展示では、イタリアにおける視覚障がい者に向けた美術鑑賞の取り組みと絵本のご紹介として、触察図(原画を立体的に表現したレリーフ状の木製パネル)とさわる絵本を展示します。
さらに、優れた児童書に贈られるボローニャ・ラガッツィ賞を受賞した絵本は、会場で手に取ってご覧いただけます。世界60か国、16,000冊以上の絵本・児童書を所蔵する当館で、絵本と原画の両方をお楽しみください。
【展覧会を鑑賞して】
私は普段、絵本を読む機会が少ない。このような絵本原画の展示を鑑賞するたびに「なんてもったいない事をしているのだろうか」と考えてしまう。
鑑賞の仕方は人それぞれだと思うが、私はその日の精神状態によって好みが分かれる。その日はなぜか、ヴィヴィッドカラーと色味の無い作品に引き込まれた。
ヴィヴィッドカラーで気になった作品は2作品あり、共に韓国の作家作品であった。その鮮やかな色彩はチマチョゴリを想像させた。鮮やかなだけでなく、力強さを感じる作品だった。同様に色味の美しさに惹かれた作品として「遠野物語」がある。日本昔話特有の薄暗い印象を持っていたので、このような美しい色で描かれると「民話」のイメージから遠のく。色使いでその物語の印象が大きく変わるのは、とても意外であった。この「遠野物語」は本展のチケットやチラシにも使用されている。実際に絵本を読むことができるので、ぜひそちらも鑑賞していただきたい。
色味のない作品で言えば「ハイキョ」。イタリアの作家作品だ。イタリアの作家が「ハイキョ」というタイトルを持ってきたことにも興味がある。「ハイキョ」は既に世界で浸透している日本語のひとつなのだろうか、、、。色味のない日本の風景に朱色で鳥居などが描かれている。そしてウサギを彷彿させる人物のかわいさ。「ハイキョ」という暗い世界より、不思議なファンタジーのような世界を感じた。そして水墨画のようなタッチの「ネコとハコ」。中国の作家作品である。ネコがハコに入る物語だろうか。5枚目の絵画はタイトルが「ハコはネコ」になっていた。思わずクスリと笑ってしまう作品だ。
2階の展示室には触察図(原画を立体的に表現したレリーフ状の木製パネル)がある。残念ながら、感染症対策のため触れることができなかった。レーザーカッターで図柄を作成していて、大変緻密な構造であった。(※触察図は視覚障がい者の方は触れる事ができます)
短い展示期間(1月24日まで)だが、感染症対策をしっかりして色とりどりの世界をみてみよう。
※施設の利用状況に関しては太田市美術館・図書館のWebサイトをご確認ください