Exhibition

本と美術の展覧会vol.4
「めくる、ひろがる―武井武雄と常田泰由の本と絵と―」 太田市美術館・図書館

GO ON編集人

【展覧会概要】※展覧会概要の下に取材記事を掲載しています

2017年から開催してきた「本と美術の展覧会」シリーズ。その第4弾は、本における重要な要素である、「めくる」動作に着目し、童画家・武井武雄(1894-1983)と版画家・常田泰由(1980-)の作品を紹介するものです。

本は、ページをめくるごとに物語が進展します。「めくる」ための手の動きと、物語の進行は不可分な要素として私たちの意識に知らず知らずのうちに内面化されているでしょう。私たちは、少ない言葉とイメージ(絵)で展開される絵本を読む時、次の展開への期待をもってページをめくっていた/いるのではないでしょうか。ページを「めくる」という動作が不可欠な本の構造は、それだけで物語を想像させてしまう力を内包しているのかもしれません。

さて、日本において子どものための絵画を「童画」と名付け推進した武井武雄は、本にまつわる美術を多数手がけています。子ども向け絵雑誌の絵画をはじめ、本の装幀や、多様な素材と技法を駆使し、こだわりぬいて制作された刊本作品。いずれも本の内容と絵やデザインとが溶け合い一つになることが目指されています。

一方、常田泰由は、身の回りにあるかたちを見つめ、そのドローイングから版画、ペインティング、コラージュ、そして本など、多様な展開を見せています。特に近年多数制作している本の作品は、断片的なイメージが寄せ集められ、綴じられ、そしてぱらぱらとめくられることで単一の平面作品では得られない効果を生み出しています。

本展では、武井武雄と常田泰由の本の作品をはじめ、版画や水彩画、コラージュ、インスタレーションなどを展示します。各展示室では作品がめくられていく映像もご覧いただけます。二人の作家の本と絵とを行ったり来たりしながら、本と美術、二つの接点に思いを寄せてみてください。

前期:3月5日(土)~4月24日(日)/後期:4月27日(水)〜5月29日(日)

【展覧会を鑑賞して】

みなさん、本は好きだろうか。私は、本が好きだ。主に積読派だが中身はもちろん、装丁の美しさから手に取ることもある。今回の展示をみて、改めて本の美しさとデザインのおもしろさを感じた。2階の展示室2には武井武雄の作品、1階の展示室1には常田泰由の作品がある。では、私が興味を持った作品を紹介しよう。

武井武雄の作品は、童画や版画、デザイン性に富んだ刊本作品までと幅広い。
水彩画の『どちらがつよい』は、顔が果実で体が人間。よくみると1人ひとりの表情に変化があり、思わずクスッと微笑んでしまう。『あいすくりーむのやまですべろ』は、銀の器に盛られたこんもりとしたアイスクリームの山をスキーで滑っていく。人物がとても小さいので、アイスクリームの山がどれほど大きいのか想像するのも楽しい。山に埋もれている人物や犬もいて、目を凝らしてみるほど発見がある童画作品だ。

私が最も感動したのは刊本作品の数々。武井武雄が創作した本の芸術作品というのだろうか。物語や挿絵だけでなく、紙、製本、装丁全てを監督している。1冊ずつ函に入った本の数々は、まるで宝物のようだ。サイズ感もかわいらしい。

函にも種類があり、挿込函、めおと函など。昔の本は函に入っていることが多いので、今以上にとても大切にされていたのではないかと思う。うれしいことにケースに入った刊本作品は、映像で全作品全ページをみることができる。

刊本作品の中で特に目を奪われた、刊本作品No.59『人魚と嫦娥』。螺鈿(らでん)細工を用いた美しい挿絵をみていると、「本」という分野を飛び越え、ひとつの芸術作品のように思える。さらに映像でみると、細かいところまでよくわかる。函の表には繊維が入った紙が使用されているのだが、光沢があり光の角度によって貝殻のようにみえるのだ。螺鈿(らでん)細工だけでなく、紙の特徴を生かした表現に脱帽した。興味のある作品があれば、ぜひとも映像の作品紹介もみてほしい。

2階の展示室2は武井武雄の作品が並ぶ

1階の展示室2の常田泰由の作品は、武井武雄の作品とは一転してモダンで色鮮やかな世界が広がる。武井武雄の刊本作品を彷彿とさせる小さな本の数々は、時代を超えて本をつくることの楽しさ、奥深さを伝えているように感じた。

本が好きな方はより一層魅了され、本と縁遠い方は、本を手に取る第一歩になるだろう。

色鮮やかな常田泰由の作品が並ぶ1階の展示室1

※施設の利用状況に関しては太田市美術館・図書館のWebサイトをご確認ください

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太田市美術館・図書館
太田市美術館・図書館

アート系の本や雑誌、絵本などが揃う幅広い世代の方たちが楽しめる開かれた空間。グリーンのある屋上では、1Fのカフェで買ったドリンクを片手に寛ぐこともできる。