Exhibition

デビュー50周年 諸星大二郎展 異界への扉
【終了しました】 足利市立美術館

GO ON編集人

【展覧会概要】※展覧会概要の下に取材記事を掲載しています

諸星大二郎(1949〜)は1970年に『ジュンコ・恐喝』でデビューし、2020年にデビュー50周年を迎えました。本展は、一般の読者から異分野の研究者にいたるまで、絶大な支持を受けている諸星の原画約350点を中心に、作品世界に関わりの深い美術作品や民俗資料などを合わせて展示します。そして、読者を異界へと導く魅力の原点に迫ります。

前期・後期で展示替えがあります。
【前期】10月23日(土)~11月23日(火・祝)
【後期】11月25日(木)~12月26日(日)

《『暗黒神話』より「天の章」本文原画》1976年 Ⓒ諸星大二郎

【展覧会を鑑賞して】

恥ずかしながら、私は諸星大二郎の漫画を読んだことがなく、名前を聞いてもピンとこなかった。しばらくして、私の家族が大ファンで自宅に『暗黒神話』『孔子暗黒伝』が本棚にあることに気づいた。全く知識のない私だが、今回は原画を鑑賞しながら「これは続きを読みたい!」と感じた作品について感想を述べたいと思う。

私の好みだが、昔の街並みから漂う、不穏な空気を感じる作品に注目して鑑賞をした。

『ジュンコ・恐喝』
昔の池袋の街並み。映画『イージー・ライダー』の看板やストリップ劇場の看板がみえる。そして男女で会話をするシーンが、映画のように感じた。猥雑な雰囲気が他の作品とは異なり、大変興味を持った。この作品はデビュー作である。

『不安の立像』
満員電車に揺られる人たちは、高度成長期の日本を彷彿とさせる。「日常からみえる非日常、非日常からみえる日常」という言葉が使われていた。1970年、私が生まれる以前の世界。「戦後」ではないが、街にはその名残もあったと思う。その反面、どんどん近代化していく街並み。「日常」が昔の名残、「非日常」が近代化していくこと、とも感じ取ることができた。

『夢みる機械』
1969年に制作されたスバルビル地下にある「新宿の目」が作中に出てくる。私は何度かその前を通ったことがある。不気味に思ったことは一度もない。私の勝手な感想だが、新宿の東と西は世界が異なるように思う。西は元々浄水場跡地で、そこに高層ビル群が立ち並んだ。「つくられた街」という印象がある。秘密の場所の入り口が「新宿の目」ということに合点がいったのは、そういった印象からもきているのではないだろうか。

『栞と紙魚子(しおりとしみこ)シリーズ』
特に気になった作品は『弁財天怒る!』、『ラビリンス』の中のセリフ「キャベツと肉の間を通れ」、『古本地獄屋敷』である。ホラーコメディは大好きな分野だ。そして好きなキャラクターとして投票をしたが、私は紙魚子が好きだ。
印象に残ったのは『古本地獄屋敷』。古い物はそもそも怖いと思っている。それが大量に積み重なり迷宮化している様にゾッとした。

『(眼鏡なしで)右と左に見えるもの〜エリック・サティ氏への親愛なる手紙〜』
ジムノペディ1番を聴いて発想を得た作品だという。エリック・サティの音楽を漫画にするという発想もすごいが、エリック・サティ以上の摩訶不思議な世界が描かれていて大変驚いた。頭の中で曲を流しながら読みたい。

私のように諸星大二郎作品を読んだことがなくても、十分に堪能できる。作品を描くにあたってインスパイアされた物事についても言及されているので、諸星大二郎の世界観が大いに伝わった。今回気になった作品はじっくり読み込んで、諸星大二郎ワールドに足を踏み入れたい思う。

※施設の利用状況に関しては足利市立美術館のWebサイトをご確認ください

Place

足利市立美術館
足利市立美術館

集合住宅と併設された美術館。1階と2階は美術館、その上は住居という個性的なつくり。 通るたびに、住んでいる方をうらやましく思う。