【展覧会概要】※展覧会概要の下に取材記事を掲載しています
当館の開館20周年記念として、フランソワ・ポンポン(1855 -1933)の日本初の展覧会を開催します。
ポンポンは、20世紀前半のフランスにおいて、革新的な動物彫刻を生み出した彫刻家です。ロダンの下彫り職人をしていたポンポンは、ロダンから、ヴォリュームと動きの表現を学びました。動物の観察を行った上で、古代エジプト美術にならった形態の単純化を進め、1906年に、生命感と洗練化の完璧なバランスをもつモダンな動物彫刻を世に出します。1922年に発表された、体長2.5mの記念碑的な傑作《シロクマ》は、一躍注目を集め、亡くなるまでの十数年間、様々な動物彫刻を生み出し、活躍しました。
当館は、国内では唯一のまとまったポンポンの作品・資料をコレクションする美術館として、ポンポンの調査研究を続けてきました。国内を巡回する本展では、フランスのディジョン美術館、出身地ソーリューのフランソワ・ポンポン美術館、パリのオルセー美術館の作品と当館の作品を合わせ、初期から晩年までの石彫、ブロンズ、石膏、デッサン、約90点を紹介します。
さらに当館会場では巡回作品に加え、当館のポンポン関連資料から150点余りを一挙に展示します。ポンポンが収集した動物の写真や絵はがき、ポンポンが使った道具などを通して、ポンポンの動物彫刻誕生の背景と魅力に迫ります。当館敷地内に立つ、ポンポンのアトリエを再構成した別館「彫刻家のアトリエ」と合わせ、どうぞ本展をお楽しみください。
【展覧会を鑑賞して】
フランソワ・ポンポンの名前を知ったのは、ここ群馬県立館林美術館にはじめて訪れた時である。「ポンポン」という響きがかわいくて、シロクマや鳥の彫刻を鑑賞した。次第に「ポンポン」という名を裏切らない、愛らしいフォルムの彫刻に魅了されていった。
本展では、フランソワ・ポンポンの歴史を辿りながら「マイベストポンポン」を見つけるという勝手なミッションを掲げ、展示会場へ足を運んだ。
ポンポンは下積みの時代が長く、ロダンの下彫り職人からはじまり、50歳を過ぎてから動物の作品をつくるようになったという。そして67歳でようやく高い評価をされるようになった。なんとも遅咲きである。現在40代の私にとって、このポンポンの経歴は「まだまだいけるぞ!」といった希望にもつながった。
さて、本展で特に気になった作品をいくつか挙げたい。
『モグラ』。土は荒く表現されているのに対し、モグラは滑らか。地中からモグラが出てくる様子だが、そもそもモグラをみたことがないので「モグラってこんな感じなのか?」と動物園気分で見入ってしまった。
『ほろほろ鳥』、『牝豚』。共に鑑賞済みの作品だったが、今回はじめて色が付いていることに気がついた。『ほろほろ鳥』は緑色の地色から茶色の斑点が浮かび上がっており、すっと彫られた羽の形も美しい。『牝豚』は茶色の毛並みを表現していて、またお乳の形が印象的だった。
そして「マイベストポンポン」である『雉鳩』。『モグラ』と同じような荒さと滑らかさのコントラストがある作品。『雉鳩』といえば、早朝耳にする特徴的な鳴き声しか印象はなく、どのような形をしているのかなど考えたことはなかった。しかしポンポンの『雉鳩』をみたら、360°かわいくて「なんて愛らしい生き物なのだ!」と感動してしまった。ブロンズ(黒)と石膏(白)があるが、私はブロンズ(黒)が好みだ。
『巣の雌鳩』は正面からみるのがベストだろう。お腹のつぶれた感じが何とも言えない。アトリエでニコラという鳩を飼っていたポンポン。動物と一緒に生活をすることで、その動物のかわいいポーズを見つけることが得意だったのだろう。
代表作である『シロクマ』からも分かるように、ポンポンの作品はとてもシンプルだ。削ぎ落とされた形だけど、その動物の特徴となる部分が残されているので、とても生き生きとしている。それは「動きをかたちにする」いうロダンの教えが影響しているようだ。
シンプルだけど、あたたかく愛らしいポンポンの作品。寒い冬の日、ほっこり癒されに行ってみてはどうだろうか。もちろん別館のアトリエも忘れずに。