Exhibition

永井一正のポスターデザイン
―いきること・つくること―
【終了しました】 群馬県立館林美術館

GO ON編集人

【展覧会概要】※展覧会概要の下に取材記事を掲載しています

日本を代表するグラフィックデザイナーである永井一正(1929~)は、1950年初頭よりグラフィックデザインの現場に身を置き、活動を始めます。

1953年に日本宣伝美術会(日宣美)会員となり、1960年に亀倉雄策や田中一光らとともに日本デザインセンター創立に参加すると、常に時代の最先端において国家事業や企業、団体のポスターやロゴ、シンボルマークを世に送り出してきました。優れたデザイン感覚をもって造形化された永井のポスターは、広告としての役割を果たすだけに留まらず、芸術作品としての強度と魅力も持ち合わせています。国内外のポスターコンクールにてグランプリを獲得し、永井は90歳を超える現在まで世界のデザイン界を牽引してきたといっても過言ではありません。

本展では、作者より寄贈頂いた当館のポスターコレクションより厳選した約140点を通して、動物表現へ向かう前の幾何学的表現による作品から、永井の個展や美術館の企画展、公募展などの宣伝ポスター、1980年代後半から展開される《LIFE》シリーズまで、幅広く紹介します。とくに、地球上の様々な動物たちを題材に生命の多様性や尊さを伝える《LIFE》シリーズは、永井の生命観や創作への想いが凝縮された代表作と言えるでしょう。

珠玉の大型ポスター作品群と向き合う本展が、永井のデザイン史における仕事と功績を振り返る機会となれば幸いです。

【展覧会を鑑賞して】

永井一正という名前や作品はなんとなく知っていたが、じっくりと鑑賞するのは今回がはじめてだった。おおよそ年代順に展示されている作品は、時代背景を考慮しながら鑑賞することで、より一層楽しむことができた。

個人的に、展示1が最も魅力的だった。1980年台後半から90年にかけての作品だ。黒がベースの幻想的なデザインは、今の時代ではみかけないデザインだと思う。当時は現代のようにPhotoshopやIllustratorが普及している時代ではない。そうすると、この細密な線はカラス口を使った手書きなのではないかと想像する。私はそう考えるだけで、意識が遠のいた。現代のデザイナーには簡単に描くことができない技術だろう。

《[北欧デザインの今日―生活のなかの形]展》。この作品をみて真っ先に思ったことは、現代に於けるいわゆる「北欧っぽさ」が全くない。「北欧」と聞くと、おおよそ色や雰囲気が定着していると思うが、この作品はその期待を大きく裏切る。現代ではこのようなデザインは生まれないだろう。それが大変おもしろい。そして、いつからあの「北欧っぽさ」が定着してきたのだろうかと疑問に思った。絵画と違ってデザインは、時代と共に変化していくので、時代背景を想像することも作品を理解するために必要だと思う。

《ヒロシマアピールズ》。優しい光をまとった羽が大変美しく、それだけで「平和」を感じる。言葉がなくてもデザインのみで訴求している素晴らしい作品である。

展示2《人権―共生》。今まで黒ベースが多い作品だったが、一転してこれはやさしいピンクベースの作品だ。吉祥天のような人物がラフな線で描かれているのだが、そのラフさとは対照に細密なデザインが部分に描かれている。緊張感とラフさのバランスが良く、ずっと見つめていたい作品だ。

展示4《KAZUMASA NAGAI EXHIBITION (ウサギ)》。網に捕らわれたウサギなのか、宇宙へ連れて行かれるウサギなのか、想像力を掻き立てられる作品。黒とのコントラストが好みであった。

展示5《KAZUMASA NAGAI DESIGN LIFE (ウサギ)》、《KAZUMASA NAGAI DESIGN LIFE (サル)》。色面が中心にレイアウトされた珍しい作品。色面は木なのだろうか。動物が木から顔を覗いているように思えた。

広告の役割だけで完結せず、みる側にストーリーを想像させることができるデザインの数々に圧倒された。そして《LIFE》シリーズのように何年も継続していく作品をみて、デザインを通して訴求できることの可能性を感じた。ぜひ、みなさんもお気に入りの作品を探してほしい。

※施設の利用状況に関しては群馬県立館林美術館のWebサイトをご確認ください

Place

群馬県立館林美術館
群馬県立館林美術館

広大な自然の中に佇む群馬県立館林美術館は、どこをとっても絵になる素晴らしいロケーションが魅力的。朝から夕方まで、ゆっくりと過ごしたい場所である。