【展覧会概要】※展覧会概要の下に取材記事を掲載しています
イタリア・ボローニャの児童書専門の国際見本市「ボローニャ・チルドレンズ・ブックフェア」が主催する、絵本原画コンクールの入選作品を展示します。このコンクールは、5枚1組のイラストレーションで、既刊か未発表かを問わず応募できるため、新人の登竜門ともなっています。2021年は日本を含む23の国と地域の76作家が入選しました。様々な技法で描かれた、個性的で魅力あふれる作品をぜひご覧ください。世界60か国、16,000冊以上の絵本・児童書を所蔵する当館で、絵本と原画の両方をお楽しみください。
【展覧会を鑑賞して】
色彩や物語の内容から作品の国を想像することは、イタリア・ボローニャ国際絵本原画展の楽しみ方のひとつではないだろうか。日本の絵本ではあまり見かけない鮮やかな色彩、暗い気分になりそうな色のない世界、不気味さを感じる細かい描写など、想像しながらその国の文化や政治背景を考えることは、本展ならではの楽しみ方だと思う。
今回、私が特に気になった作品はチェン・イーチン(台湾)『日々の品々』。
皿の上に置かれたなつめ、さつまいも、ただ置いてあるだけのマスキングテープ、マグカップ、やかん。一体、どんな物語なのか。作品が発する情報は至って少ない。彩度の低い色味、ラフな描き方。なんとなく熊谷守一の作品を彷彿とさせた。次第に「どんな物語なのか」なんて難しいことを考える必要はなく、タイトル通り『日々の品々』で十分伝わっているではないか、と考え直した。
ジュリア・マリア・ベッリ(イタリア)『しみ』。
明度の低いブルー調の色。「この世でもっとも怖いものは『しみ』」だと少女が話す。私は夜眠れない時に見つめてしまう天井の『しみ』を思い出した。「この世でもっとも怖いもの」。確かにそうだ。いつかこの少女が『しみ』を消せるように成長してほしいと願う。
マジード・ファハールザヴァーレ(イラン)『ハト先生と空飛ぶキリンたち』。
黒インクのみで描かれたリアルな鳩。タイトルや絵のタッチからユーモラスな印象を受けるが、「人間はなぜ動物を傷つけ続けるのか」と深いテーマを訴えかけていた。
ハン・スンム(韓国)『お父さんとお母さんの小さな秘密』。
元気のでる色鮮やかな色彩とストーリー。日本でも見たことがあるようなタッチのイラストだ。チマチョゴリのような色彩は、韓国ならでは。子どもだけではなく、大人でも気分が落ち込んだ時に手に取って読みたい1冊だろう。
図書館2階「2021ボローニャ原画展特集コーナー」にて手に取って読める本もあるので、ぜひ原画と併せて楽しんでほしい。