Exhibition

柳原義達 展【終了しました】 足利市立美術館

GO ON編集人

【展覧会概要】※展覧会概要の下に取材記事を掲載しています

柳原義達(1910-2004)は戦前よりロダン、ブールデルの影響により彫刻制作を始めました。1953年に渡仏し、対象の本質に迫る緊張感に満ちた新たな具象彫刻を目指しました。深いヒューマニズムに裏打ちされた、生命感あふれる作品は、具象彫刻の可能性を押し開き、戦後日本の彫刻界に大きな足跡を残しました。本展は三重県立美術館のコレクションより構成します。

《風の中の鴉》1984年 三重県立美術館蔵

【展覧会を鑑賞して】

柳原義達と聞いて、ぱっと頭に思い浮かぶは鳥の作品だ。本展では展示室2に鴉(カラス)、展示室3は鳩の作品が我々を出迎えてくれる。
鳩はかわいい。展示室3は公園のベンチをイメージしているのだろうか。様々な表情の鳩がおり、自分好みの鳩を探す楽しみがあった。展示室2の鴉(カラス)。カラスに襲われたことのある私は例え彫刻作品といえども、恐怖心の方が強くなってしまい、特にクチバシの大きいカラスには、近づくことにも抵抗があった。それほど迫力のある作品である。

展示室3の鳩たち

今回の展示において、私は展示室1の女性像に強く惹かれてしまった。

半開きの口元、猫背気味で右手をだらりと垂らした女性像『犬の唄(1950)』。敗戦、火災による作品の焼失などの体験を「戦争に対する私のアイロニー」として、この作品の制作に至ったという。犬が飼い主に媚びるようなポーズには、そのような精神性があらわれている。きっと内心は、噛みつきたいほどの反抗心があるのではないだろうか。

戦争体験者の作品には、それぞれの作家が背負った戦争の傷跡が描かれている。柳原義達の傷跡が、このように表現されているということに強い関心を抱いた。

正面からみつめると顔の原形を感じず、少しギョッとしてしまう『赤毛の女』。しかし角度を変えてみると、女の顔立ちや表情を汲み取ることができる。何度も角度を変えてみて、自分好みの角度で鑑賞を楽しんだ。

薄い身体で頭の後ろに腕を組むポーズをした、ジャコメッティの作品のような『立女』。この作品もみるたびに発見があり、じっくりと鑑賞したい。

ふくよかで存在感のある女性像から、デフォルメされた女性像まで作品の種類は幅広く、鑑賞をしながら様々な女性を想像した。もしも私がモデルになるのであれば、どのようなテイストの作品になるのだろうか。なんてことも想像しつつ…。

本展では彫刻作品の他デッサンもあるので、柳原義達をじっくりと堪能できるだろう。

※施設の利用状況に関しては足利市立美術館のWebサイトをご確認ください

http://www.watv.ne.jp/~ashi-bi/index.html

Place

足利市立美術館
足利市立美術館

集合住宅と併設された美術館。1階と2階は美術館、その上は住居という個性的なつくり。 通るたびに、住んでいる方をうらやましく思う。