Exhibition

野口哲哉展 - THIS IS NOT A SAMURAI
【終了しました】 群馬県立館林美術館

GO ON編集人

【展覧会概要】※展覧会概要の下に取材記事を掲載しています

鎧と人間をテーマに、現代性や人間性を問いかける美術作家、野口哲哉。多様な文化や感情が混ざり合うユニークな世界観は国内外の幅広い層に支持されています。

鎧を着た人物が所在なくたたずんでいるかと思えば、風船を見つめたり、空中に浮かんだり、時にはブランドロゴの付いた鎧を自然に着こなしたり。一見ユーモラスに見える作品は、どこか物悲しい雰囲気を帯びており、そこには目まぐるしく移り変わる文明の中で、喜びや苦悩といった矛盾を抱えながら生きる人間の姿が鋭い視点で映し出されています。

本展では、鎧をまとう人々の彫刻や絵画など、初期から新作まで代表作約180点で、野口哲哉の幅広い思考と精緻な作品に込められた優しさと悲しさ、人間への好奇心にあふれた世界を紹介します。

○現代美術作家・野口哲哉について
1980年、香川県高松市生まれ。広島市立大学芸術学部油絵科卒業後、2005年同大大学院修了。「鎧と人間」をテーマに、樹脂やアクリル絵具を使って彫刻や絵画作品などを制作する。主な個展に「野口哲哉展-野口哲哉の武者分類図鑑-」(練馬区立美術館 、アサヒビール大山崎山荘美術館)、「中世より愛をこめて」(ポーラ ミュージアム アネックス)、「鎧ノ中デ-富山編-」 (秋水美術館 )。著書に「侍達ノ居ル処。」(青幻舎)、「野口哲哉作品集~中世より愛をこめて~」(求龍堂)。CHANELなどの企業とコラボレーションした作品も制作。 2016年、当館に巡回した「再発見!ニッポンの立体」展に5点の作品を出品。

本展は、国内外で高い評価を受けている野口哲哉の、これまでで最大規模の展覧会です。これまで香川会場、山口会場を巡回し、館林会場を経て愛知会場に巡回します。お見逃しなく。

《WOODEN HORSE》2020年 高松市美術館蔵

【展覧会を鑑賞して】

なぜ鎧姿なのに侍ではないのか?「THIS IS NOT A SAMURAI」というタイトルがずっと 気になっていた。説明の文中にも侍という言葉は使用されず「鎧を着た人物」と表記されて いる。頭に「?マーク」を浮かべながら展示会場へ向かった。

早々に目に入った作品は『SAMURAI BOX』。自分の知る某ミュージシャンに似ていて「もしかしたら、似ている人を探すという楽しみ方もあるかもしれない」という発見をした。その後『サムライ・スタンス~武士のみちたる姿~』がお茶の間で人気の俳優に似ていることを発見した。

ところで鎧は人間だけのものなのだろうか?本展には鎧を着た猫『猫鎧』と虎『白虎』がい た。実際に動物が着る鎧はあったそうだが、現実か想像なのか不思議な世界であった。
『誰モ喋ッテハイケナイ』は、昔そんなCMを見たことがあるようなデジャブを感じつつ作品を鑑賞した。

野口哲哉《clumsy heart》2018年

「THIS IS NOT A SAMURAI」の意味とは何か。「鎧の中で儚く輝く人間の姿」という野口氏の言葉があった。私個人の解釈だが、鎧は人間を守ってくれるものである。だから鎧を身につけている時こそ、物思いに耽って遠くを見つめたり、眠ったりして安心できる場所なのではないか。

野口氏の作品は鎧を着た人の表情や鎧のディテールはもちろんだが、それをさらに引き立たせるラベルや額などにも注視してほしい。あえて古い紙のように仕立てたデザインなど、細部にこだわる手法に目を奪われた。

最後に展示室1には『フランソワ・ポンポン像』がある。かわいらしいポンポンを見逃さないように。また展示室に入る前にあるVTRも必見。野口氏の美術に対する考え方や制作過程がわかりやすくまとめてある。

野口氏の作品は、子どもから大人まで幅広い世代で楽しめる作品だ。クスッと笑ったり深く考えたり、似ている人を探してみたり、自分流の鑑賞の仕方をみつけて楽しんでほしい。

※施設の利用状況に関しては群馬県立館林美術館のWebサイトをご確認ください

http://www.gmat.pref.gunma.jp/

Place

群馬県立館林美術館
群馬県立館林美術館

広大な自然の中に佇む群馬県立館林美術館は、どこをとっても絵になる素晴らしいロケーションが魅力的。朝から夕方まで、ゆっくりと過ごしたい場所である。