Column
仕事を変える
私は仕事をけっこう変えている方だと思う。自分の周りにいる人の様子を聞いた限りの中だが、変えた数はトップではないだろうか。
私は仕事をけっこう変えている方だと思う。自分の周りにいる人の様子を聞いた限りの中だが、変えた数はトップではないだろうか。
「私たちって、ずっと動いているな、と思って」。いつものように丁寧に私の髪に櫛やハサミをあててくれていた美容室valoのようこさんが言った。
結局いつものようにカオルと別れてから、私は帰り道を左折するところを右折したり、まっすぐ行くところを左折したりして遠まわりをすることにした。
どのくらいの時間が過ぎていったのかはわからないけれど、少なくとも私のなかでは待っている人の中に苛立ちや何か異常な事態になった心配を生じさせる時間は経っていたのではないかと不安になって、そのまま立っていた。
今日は大丈夫な気がする、と力を抜いた所作で別盛りパクチーを自分のフォーの上にのせ、堂々と食べた。
「おはよう、タマキ。あのさ、今日の予定はあるの?」
洗顔を終えて、タオルで顔をぬぐいながら、洗面所の窓からとなりの家のかりんの木を見上げる。
カオルの長い腕で結合された塊がほどけたのは、むせてしまった私のせき払いのせいだった。
奥歯と歯茎の溝に残っているチョコレートとスパイスの香りを舌でかきだしながら、カオルのナビのままに私は夜の街中を車で進んだ。