Column
夏中彷徨
だから何だというはなしだ。上に向かって起きているかとたずねると、うめき声だけが返ってきた。
だから何だというはなしだ。上に向かって起きているかとたずねると、うめき声だけが返ってきた。
長いトイレからでてきた夫が、スマホを持っていないかどうかを無意識のうちに確認している自分に気づいて、ちょっといやな気分になったりした。
「しゃべる時は」と男が言う。「しゃべる時は、この紙に書いてください」指し示されるのはキャビネットの上に厚く積まれた手のひらサイズの正方形の紙切れ。
往復書簡2回目。弟からの返信は北海道への旅と村上春樹だった。
花寿美は、○○○○だ。小学校に入学してすぐのころ、花寿美は自分がきれいでないことを、うまれて初めて知った。
往復書簡。あっという間に自分の番になってしまった。
眠れぬ夜に、彼女はやってくる。ふ、と夜の香りがして、(夜露と暗がりの苔むす匂い、冷たくてよそよそしい匂いだ)気づくと彼女は私の隣で眠っている。
GO ONの原稿を書いてみないかと弟に誘われた。
「わたしは口を持たずに生まれてきたの」空白に満ちた視界の真ん中で、シンとたたずんだまま、少女Aはそう言った。