Column

今から始まるコラムのBGMには
東京事変『閃光少女』を

PEANUTS BAKERY laboratory

2022年も残りわずか5ヶ月で終わってしまう。歳を重ねる毎に一日が一瞬で終わっていく体感の中、日に日に未来へのわくわく感とやりたい事が真昼間の入道雲のようにもこもこと増大して、これはもうきっと、人生の最後の端っこの方まで計画に入れていかないとやりきれないなと感じるようになってきた。

例えば、昨年から始めたランニング。当初はただ肉体を動かすことが気持ちよくて、1人で川辺を好きなように走る事で満足していたしそれで充分と感じていたが、半年程経つと周回コースで前を走る先輩ランナーの走り方を学ぼうとして「ついて行ってみようか」と感じたり『Tarzan』なんて読み始めたりとごく自然に変化し、12月には大会にまでエントリーして人と走る事を楽しもうとしている。控えている大会では今走れるようになった10キロだけれど、きっと続けていれば20キロ、そしてフルマラソンと距離を伸ばして走りたくなるかもしれない。

パン作りに関して、つい何ヶ月か前に季節の食材で酵母を起こして焼くパンは、自分の興味や嗜好ととてもマッチしていることに気づいた。

フルーツでつくる自家製酵母というと、ドライレーズンを用いた方法がよく紹介されていて私もレーズンから始めたけれど、旬の生果実から起こす酵母は、より香りも味も芳醇でドラマティックなのだ。

そこまで急にたどり着いたわけではなくて、3年前までは酵母が何かも分からないし本を読んでも理解できなかった。あまりにも分からないので学校にも通ってみたが、それでも手探りで今も失敗を繰り返している。けれども今、3年前には想像し得なかった世界がみえている。

人と比較することもなく誰が見てるわけでもない、自分の目の前だけにじわじわ広がっている新世界だ。

マラソンもパン作りも今日明日で急激に飛躍して速く走れるようになったり、美味しいパンが焼ける訳ではないし常に途上だけれども、未来に期待なんてかけず、無我夢中なまま「今」を積み重ねていくことが、あるがままの自分らしさを獲得していくことに繋がるのではないかと感じるようになった。

自分の深部へと静かに潜水していくような今の感覚、家とか会社とか学校という箱にがっちり収まっていた頃は分からなかった。それは小さい頃から、自分がどう感じるかより先に周囲の空気に過敏に反応する癖がついてしまっているから、と思う。

こんな夏空を見かけたら気分が高揚せざるを得ない

夏本番、長期間地中にいた蝉がやっと地上に出てきて、朝から生命の限り声を上げる姿は人ごととは思えずにいる。

週5日、8時間勤務の仕事+カフェへの焼き菓子卸しが月2回、週1パン販売(2名の方へだけ)とランニング。

これが2022年7月現在のタスクであり、すでに容量を超えそうだけれども、さらに来週からは週1回同僚とヨガを教わりに行くことに決めた(少し前まで職場の人とプライベートの付き合いは一線を意識的に引いてきたけれど、そんなこだわりもバカバカしいものだったと気付く)。枠を外して仲良くしたければした方が人生は楽しめる。

「生きていくには、道をひとつに絞ることしかない」と考えていた時期があった。家庭を持っていないこともあり、余計にそう思い込んでいたかもしれないが、その執着心は度々きびしくキリキリと自分を追い詰め、責め立てた。

別に複数あったっていいじゃないか、と

今ならばわかる。行き詰まった時に抜け道がある、という安心感や開放感は他人や自分への優しさへと繋がっていく。

あとは体力と気力が問題だ。5~6年前よりも明らかに集中力の持続が困難になり、疲労も感じやすくなり、気力だけで突っ走れる年代は残念ながら過ぎたようなので無理は禁物だ。詰め込んだ分、何かをやめて余白を意識して作らないといけない。

睡眠は7時間はとりたい。そのかわりに車を購入して移動時間を短縮し、朝は1時間だけ早く起きて、スマートフォンに触れる時間を朝15分だけにして(タイマーをかけようかな)コンビニは寄らず、余計なことはしないようにしよう。あとは何ができるかな。頭の中で予定を組み立てず前日全部書き出そう。例えば今日は風呂場をしっかり掃除するとか、帰りに電池を買うとか。

そしてさらに70歳くらいになったらピアノも教わりたいし、猫とも他人とも共同生活というものを本格的に体験してみたいな、と思える自分に出会ってみたい(今は自分の世話と少しの植物で手一杯だけれど、いつか)。

さあ、まずは来たる夏を思う存分に楽しみたい!

Creator

PEANUTS BAKERY laboratory 長谷川渚

1980年生まれ、神奈川県秦野市存住。パンを焼き、菓子をつくり、走る人。開業準備中。屋号は幼少期から常に傍らに居続けるSNOOPYのコミックのタイトル、及び秦野市を代表する名産物である落花生から。「laboratory=研究室」というと大袈裟な聞こえ方だけれど、かちっと決めてしまいたくない、常により良さを求めて試行錯誤する場所、自分でありたいという思いを込めて。