Column

与良マンガ道場 6

与良典悟

<その1>

先日桐生市でイベントがあって、建築家でロジウラジオパーソナリティーのねぎしさんとお会いする機会がありました。自分から言うのもなんですが一応轟音のレーベルメイト的な関係です。挨拶は大切だと思い声をかけたのですが、声をかけたあとに私はいったい誰なんだと悩んでしまい、与良典悟ではない別の偽名で名乗ってしまいました。私のラジオネームであるムーニャンと名乗ったのは完全に逃げだと思います。

自分なりに頑張った挨拶もこれでは意味がありません。ねぎしさんには微妙な顔をされたので、また後で挨拶し直そうと思います。名前が名前だけに絶対私は与良典悟ではないので、なかなかこの名前を使えないことが多いです。ただ一番私というものが伝わるのはこの名前なのでそこはジレンマですね。

以前高崎市のイベント会場で知人を通して初対面の方に「彼は与良典悟というのだよ」と紹介してもらったら、何故かYo La Tengoのマネージャーだと本気で間違えられてしまったこともあります。笑ってもらえるのが一番嬉しいのですがこうなると使いどころがホントに難しいのです。

轟音における過去の連載では、レコードのおもしろ話から自身のアイデンティティへとコラムのテーマは推移していきました。ニックネームを得たことで街へ出る機会は増えたのですが、多くの人と会う過程で改めて自分とは何なのか悩んでいるようです。いつか与良典悟になれたらよいですね。

そんなわけで挨拶の失敗談でした。あなたの遊び場にも与良典悟は潜んでいるかもしれません。あとロジウラジオのイベントが6月にねぎし村で開かれるとアナウンスがあったので、そこで頑張って挨拶しようかなと思います。ねぎし村にはヤギもいるそうなので楽しみにしております。

<その2>

漫画の青い色使いの話もそうですが、普段からあまり何も考えずに生きていますね。趣味は散歩です。何も考えないまま、空気が気持ちいいなと感じたり、見たことない鳥が飛んでいるなとか思いながら歩く時間は至福の時間なのです。何も考えないという点でいうと、同じく日々何も考えていないであろう我が家の愛猫を見てとてもシンパシーを感じたりもします。来世があったら泥になりたいですね。

ただ、レコード屋さんでは私の脳は突然フル回転しだします。新入荷に良いモノは無いか、以前からあったお目当てはまだ残っているかなど様々なことを考えるのです。インターネットの情報によるとゴキブリはピンチの時だけIQ200になる(要出典)そうですが、多分私も音楽のことが絡むと頭が良くなるのかもしれません。

自慢ではないのですがある程度行きつけのBOOK・OFFであれば、新入荷にこのバンドのCDが入っているのなら別の場所にあのバンドのCDも入っているのではないかという推測が打率4割5分くらいで当たります。大谷翔平もびっくりの能力を持っているのです。

店員さんとのおしゃべりを通して学ぶことも多いですし、やっぱり大好きな音楽の事を考えるのは楽しいのだと思います。変な話、レコード屋さんではいつもの生活以上に解像度が上がるというか、世界とつながっているような感覚になるのです。私はそういう瞬間がたまらなく好きですね。

ちなみに映画を観てもいないデレク・ジャーマンの名前を出してしまって申し訳なかったのですが、以前彼のお家の庭をテーマにしたレコードを持っていたことがありました。デレク・ジャーマンの芸術的な庭は写真集にもなるほど有名なのです。前衛的でとても内容の良いイエロー盤のレコードだったのですが、ノイズが多く入るため手放してしまったのを現在も後悔しています。発売から2年以上たってプレミア化しているようで、今もどこかに売っていないか頭をフル回転させながら探している与良典悟なのでした。

Creator

与良典悟

栃木県佐野市在住。知らない町の知らないレコード屋さんに行くのが好きです。