教えてくれる人:YOUGOOD I’m good 竹村裕吾氏
教わる人:新太郎君 11歳(小5) 趣味はゲーム
ある日モカコーヒーで寛いでいると、「最近息子はTシャツのデザインにハマっているみたい」と新太郎君のお母さんから情報を仕入れた。早速モカコーヒーの隣でシルクスクリーンのショップを営んでいるYOUGOOD I’m goodの竹村氏に報告を。「新太郎君に轟音印刷倶楽部のロゴを頼んでみよう」ということになり、今回の企画に至った。第1回目はTシャツのデザイン作成。新太郎君の考える「デザイン」について徹底取材を行った。
contents
Tシャツのインクの仕組みについて学ぼう
―どうしてTシャツのプリントって洗濯をしても色が落ちないと思う?
「剥がれないようにする物っていうか、液みたいな物があるからかな」
―お、惜しいね。
「上からシールみたいなものを重ねているというか。自分でも、この前やり方は違うけど家でTシャツのプリントをやった。その時にシールみたいのがあったから」
―それは転写シートだね。
「それが剥がれない仕組みかな」
―そうだね。油性の絵の具って分かる?
「はい」
―油性の絵の具ではないけれど顔料という物に接着剤(糊のような物)を混ぜた物を使っているよ。そうすることで洗濯しても落ちなくなるんだよ。
「なるほど」
―僕たち(シルクスクリーン職人)はそれを「バインダー」と呼んでいるよ。
(バインダーと絵の具の実物をみせる)
「へぇ、すごい。色によって、接着の力は変わったりしないのですか?」
―中にはあるかもしれないね。そういう時はまた別の薬品を入れるよ。
接着剤には染み込むタイプと上にインクがのるタイプ(ラバータイプ)があるんだ。
「あ、染み込むタイプは裏にも色がある」
(各々の着ている洋服をみて、どっちのタイプか観察する)
―それぞれバインダーの種類が異なるよ。染み込む方は硬く、上にインクがのる方は水っぽい。
「そっか、硬さで変わるのか。なるほど!」
―どっちが好み?
「こういうタイプ(染み込む)はプリントだと思わなかった。インクがのる方しかプリントのイメージがなかったな。あ、内側からみると分かりやすい」
―デザインのイメージでどっちにするか決めるんだよ。
版について学ぼう!
―印刷するには「版」が必要です。
「版?型みたいなもの?」
―(実物を見せる)これです。
「おおー!!これでサーって(スキージーの動作)やるんだっけ」
―この台でサーってやるよ。
「あ、Tシャツ用だから肩のところがへこんでいるのか」
―こうやってTシャツを板に着させて版を置いて刷る仕組みだよ。版を触ってみて。
「裏と表の穴の大きさが違うね」
―そう、家にある網戸を想像してみて。それよりもっと目が細かいよ。そして、色の数だけ版をつくる。このTシャツ(上の写真)は白と黒の版をつくったよ。デザインと色を決めながら、どんな版をつくるか考えてみよう。
デザインを決めよう!
―今日は何案持ってきたの?
「4案あります!結構厳選してきました」(iPadをみせてくれる)
―Tシャツのデザインをやってみようと思ったきっかけは?
「絵が好きだから、やってみたい!」
―どんな絵が好きなの?
「どうだろうな、、。usiさんの絵が好き。なっていったらいいのかな『5億年後に意外な結末』とかの絵を描いている人」
―へぇ、それで自分でも描いてみようって思ったんだね。では1案目をお願いします!
「自分は思いついてから描くまでが長いんですよ。その時に色々みていたら動画で似ているのをみつけたから、被ったって思っている、、。描く時間は最長で5時間。これは11分。時短でやってます」
―パクリじゃないから大丈夫だよ!これは目かな?どんなテーマがあるの?
「口と目を融合させました。最近分かったんですけど、人のパーツを描くことが好きみたいで。人のパーツを取ってもう1回付けるというか」
―じゃあこれは人のパーツを一旦バラバラにして、新太郎君の方で合体させたんだね。
「そうです。最近色々考えて耳とかも描くけど、耳って複雑な形で、左右対象じゃないから使いづらくて、、。右と左を付けたら左右対象だけど、単体だと左右対象じゃないから複雑で難しい。でもこれ(口)はデザインしやすいです」
―2案目は、このハートが溶けた感じ?イメージは?
「なんかハートを描きたかった。黒い線だけで描いたけど、再利用して色を付けました。溶けて、滑らかな感じにしたかった」
―溶けている感じにした理由はある?
「いや、なんか描きたいなって時に描いたらこうなった」
―3案目は?
「これはシンプルかもしれないけど、シンプルできれいな絵柄っていいなって思った時に描きました」
―これは天使かな?色は付けなかったんだね。
「線だけでシンプルにきれいにしたかった」
(途中で1案目と似たようなデザインを見せながら)
「あ、これは1番目に見せたやつの最初に描いたやつ。口ってどうやったら自然に描けるかなって思って、最初はここをくぼませるのを実行してなかった」
―最初の方がいいね!
「うん」
―4案目のデザインは?
「人のパーツが好きだから、目玉を何かに見立てたくて、信号の点滅っていうか、電柱から出ている丸いやつ。あれが目に見える」
―人のパーツが好きってことは、人の顔をよく見るのかな?
「うーん、自分の脳内で考えているから、じっくり人のことを見ているわけではない。頭の中でつくっている感じ」
―なるほど~。では、どれにしましょうか。もうちょっと手を加えて形にするならどれにしますかね。そうだな、、1案目いいですね!横尾忠則っぽい。
「はじめは、これに手を付けていたんですよ(笑)」
―へぇ、それも見たいなぁ。この目のデザインは、なんていうか「GO ON」と相通ずるものがありますね。
「最初目の色は、水色にするか迷ったんですよ。そうすると赤と合わないっていうか。目の中に色を入れた時にもしっくりこないので青にしました。あと影を付けてもいいかなって思ったけど、立体感があるとなんか違うなって」
物静かな雰囲気の新太郎君だが、自身で作成したデザイン案の説明になると、考えていることをたくさん話してくれる。きっと今日も絵を描いているのかな、時短で。
次回は、シルクスクリーンの工場見学へ行きます!