Column

轟音印刷倶楽部発足
Tシャツデザインをやってみたい その2

YOUGOOD I'm good

教えてくれる人:
朝日染色株式会社 取締役社長 田邊雅敏氏
http://www.asahisenshoku.co.jp/
YOUGOOD I’m good 竹村裕吾氏
教わる人:新太郎君 11歳(小5) 趣味はゲーム

YOUGOOD I’m goodの竹村氏は普段何をやっているのだろうか。
ちゃんと働いているのだろうか。
聞くところによると、足利市今福町にある朝日染色株式会社で職人として勤務しているらしい。
大きな工場の様子を知りたいという好奇心と、竹村氏が真面目にちゃんと働いているのかを確認するため、新太郎君と現場へ向かうことにした。

敷地内には歴史を感じるノコギリ屋根の建物も現存している

田邊社長自ら工場案内を

朝日染色は1918年創業の捺染工場だ。ここ足利市で70年という歴史があり、あの話題の映画のロケ地になったことでも有名だ。私と新太郎君は、竹村氏からレクチャーされたシルクスクリーンの知識を田邊社長へ伝え、今日は工場見学をしたい旨を伝えた。

しかし「タケ(竹村氏)の知識は40点だな」ということで、社長自ら工場の案内をしてくださることになった。前回の竹村氏のレクチャーは何だったのだろう、、、。

Tシャツのプリントが洗濯をしても落ちない理由として、顔料にバインダー(糊)を加えることを学んだが、朝日染色では染料プリントも扱っており田邊社長からそのバインダー(糊)をつくることが一番重要な技術だと教えていただいた。バインダー(糊)の材料として、ジャガイモなどから取れる「デンプン(生地の上にのる)」、海藻から取れアイスクリームの安定剤としても使われる「アルギン酸ソーダ(生地に染み込む)」、地中海地方で古代から食用されている「イナゴ豆(生地の上に半分のり半分染み込む)」があるという。驚くことにそれぞれ食物が由来となっている。
「食べ物が材料になっている!おもしろい!」と新太郎君は取材後モカコーヒーに帰ってからも興奮気味であった。

確かにこの説明を聞くと、竹村氏の説明は40点だ。
田邊社長の説明から、朝日染色のスゴイところをまとめてみよう。

ていねいに分かりやすく教えてくださった田邊社長

朝日染色のスゴイところ

○生地の特性に合わせてバインダー(糊)を自社で独自に配合する
○美しい色を出すことに力を注いでいる

同じピンクや黒でも生地の特性によって色の出方は大きく変わる。
「カラーキッチン」と呼ばれる場所で調色を行い、母色(ベースとなる色)にバインダー(糊)をブレンド。実際の生地に色を染め、スチーマーで固着して発色具合をテストし調整していく。Macで色をつけている私の仕事とは比較にならないほど、気が遠くなる作業だ。

色の見本帳。同じピンクでも微妙な違いがある
色をブレンドして蒸し、正しい色味が出るまで調整する試験室
母色にバインダー(糊)を入れてブレンドする作業を体験

○職人の手仕事にこだわり、職人の手によるハンドプリントの良さを追求

力強さのある色は、機械では表現できないという。糸の芯まで色を染み込ませることによって、力強さつまり発色の良さを出すことができる。これは手作業でしかできないのだ。
「糊は糊屋、付けは付け屋」といった職人が揃う朝日染色。
この「付けは付け屋(刷る人)」が竹村氏の仕事だ。他の場所では興味のなさそうな竹村氏も、自分の現場になると、少々得意げに。偶然にも新太郎君のお父さんの知り合いが勤務しているということもあり、和んだ雰囲気になった。
当然だがYOUGOOD I’m goodのワークショップで体験するそれとは規模が違いすぎるので、生地の大きさや版の多さに「これを手作業でやるなんて、、、」とまたもや気が遠くなった。少しでもずれたら全部やり直しだろうな。Macならcommand + Zで何度でも直せるのに。竹村氏はこの一連の作業ができるのだから、職人として認められているのだ(多分)。

「付けは付け屋」。この仕事を担当しているのが竹村氏(写真右)

○自社で企画・デザインをしている

薄暗い倉庫に案内されたが、その中にはたくさんのシルクスクリーンの版があった。自社でデザインをしているという朝日染色にとって、この版は大きな財産だ。社会貢献事業のひとつであるマスク販売のデザインも、これらの版が使われているとのこと。華やかなデザインのマスクをみると、新型コロナの憂鬱さが吹き飛びそうだ。
オンラインショップもあるので、ぜひデザインをみていただきたい。
https://asahisol1918.thebase.in/

たくさんの版がズラリと並ぶ
プリントされた美しい柄の生地

○環境に配慮したものづくり

バインダー(糊)の話から原材料のこだわりが伝わったと思うが、もう一つ大切なものがある。それは水、「足利の水」だ。工場の裏手には小川が流れている。水質によっても染色に影響を与えるという。「山紫水明(山や川が美しいこと)」と田邊社長は話す。足利の自然が朝日染色のつくり出す美しい色のベースになっているのだ。
一連の工程の最後に「乾燥」があるのだが、朝日染色では自然乾燥を行なっている。機械を使って乾燥させたものと比較すると、風合いが異なるという。その天然の風合いを好むメーカーもいると教えてくれた。
一つひとつの作業におけるこだわりが集結して完成する一枚の生地。
新太郎君は「これから色々な服のプリントをみてみよう」と服への興味が変わったようだ。

朝日染色のロゴが入った水のタンク
工場の裏手を流れる小川は重要な「足利の水」

今後の展望について

新型コロナの影響で大手アパレルメーカーが倒産するなど、暗いニュースが飛び交う今、田邊社長は「ハンドプリントの価値を上げていくことに努めていきたい」と話す。
また、展示会をデジタル化するなど世界へマーケットの視野を広げていくことを考えているという。
シルクスクリーンはカジュアルからハイブランドまで幅広いファッションの分野を担っている、すごい技術なのだ。そして世界に通用する技術のある企業が足利市にあることに、地元民としては胸を張っていきたい。そして竹村氏はちゃんと働いていたので、ご安心を。

今後の展望について田邊社長へ話を伺った
田邊社長と竹村氏のツーショット!

Creator

YOUGOOD I'm good

就職を機に栃木県足利市に移住。服地のプリント工場で働く傍ら、個人でオリジナル商品の製作、Tシャツなどのプリント加工を行う。適当っぷりとゆる〜い感じが武器。プリントは意外に良好かも…!?