Column

LOVE・キメる・柳家睦

佐藤一花

何故ここまで近年おぢに惹かれるのだろうか。自身の年齢のせいか、いや昔からか。

去年の年末12月に湯河原パッキーボウルにLIVEを観に行った。そこは、湯河原温泉街に突如現れる昭和感100点満点のボウリング場。螺旋階段に懐かしい照明、スペイシーな椅子にロッカーまで正に濱マイクの世界感の様で、ボウリングの良い音が響いている。LIVEへ行ったのは、柳家睦&ザ・ラットボーンズを観に。橋の下音楽祭で知ったバンドで、初回から強烈であった。午前中に鑑賞した際には、橋の下音楽祭に来たーと異世界に一気に引き込んでくれる一番のカンフル剤的存在だった。

バンドっていう括りにしてしまう事に少々違和感のある集団なのだが、ギター、ウッドベース、フルート等の楽器部隊に加え、ダンサー4人とSM嬢など多種なメンバー形態である。柳家睦氏は、ど派手な衣装に三編みサングラス、ダンサーのぢゅんこさんは完璧な80年代レオタード、ホタテを股間に設えた海女スタイルでキレッキレダンスを踊っている(本当に可愛い!)。皆其々に個性も超越し、演奏技術も高い。ダンサー達もまことに美しい。音楽はムード歌謡調で洒落ていて、ファンを日雇いと呼ぶだけに、ほぼ日雇いの自分には歌詞がグッとくることが多い。トークも面白く、爆笑と熱唱で喉が痛くなる。

湯河原パッキーボウルでのライブは、ボウリング場のレーン前にバンドセットが組んであり、ほぼピンスポットで暗闇の中、睦氏が歌い叫ぶ、面白すぎて度肝抜かれた。終わった後は勿論ファンとの交流、そして下のボウリング場へ流れ込み皆でボウリングを楽しみ終了。物販でCDにサインしてくれた睦氏に、遠方から来た事を伝えた途端豹変し、「キネマ倶楽部のチケット買えよな!」とカツ上げ式接待を受けた。最初超丁寧に対応していたのに急にキャラ変したもんで、自身でも笑っておられた。

早々年始には、湯河原からのツアーファイナルである東京キネマ倶楽部のライブへ出向いた。湯河原で完全に睦氏にカツ上げ接待を受けた訳だが、しっかりと新年の縁起物を観る様にワクワクで訪れた。初めて訪れる鴬谷駅、エレベーターで六階まで上がれば、巨大なキャバレーの様な空間が広がっていた。金の階段にミラーボール、二階式のステージから演者が登場するのだ。壁紙は渋カラーのゴブラン織で、ラウンドの丸いフロアと、二階には観客席も配置されていた。入った時点で異様に個性的な客達、褌に腹巻、ラテンの曲と共にスパンコールジャケットを着たDJなるきよ氏が務めておった。正に煌びやかな世界と、ドリンクを買いながら既に小躍りだった。

私の行ったⅡ部の前座は、ドラァグクイーンのレイチェルダムールが登場。マドンナ『Vogue』~オザケンの『強い気持ち・強い愛』にのせた、マリー・アントワネットの登場から芸者、最終的には一糸まとわぬ身体で踊る様は、美しかった。女とか男とか、超越した感覚に惹かれ、フェミニズムとかジェンダーとか頭で考えている人程みて欲しい、ヒトとして最高だなと感じた。そんなこってりな美しさ、流石だな~と思っているとFUCK OFFプリントにラペル大きめのスーツで二階ステージから階段を下り、睦氏が登場した。

麝香の加齢臭~と歌詞にも出てくるのだが、たいそう色気のある睦氏は、ムっちゃん!と大人気。今やっている某クドカンドラマもムッチ先輩…確実に引用基であろう(対バンもしている仲)。Ⅱ部構成で有ったが、完全やくざの出で立ちたけしヴァレンティ氏の名司会っぷり、お尻で割箸を割る鉄板の儀式、その割れた箸を観客へ投げるダンサーぢゅんこさん、SM嬢のラブホテル先生による背骨矯正と称した亀甲縛りからの鞭、二丁目褌協会の方による餅つきと、本当にエンタメ超えて文化だなぁと思ふ程のクラクラする完璧な時間だった。ダンサー達は、いつもに増して煌びやかさ三割増しで、舞台に立つ人の凄みを感じた。

毎度このバンドで大好きなダッチワイフの今日子明菜、ミイケイをダンサーぢゅんこさんがぶん投げて、客席をダイブしまくる五木ひろしの『夜空』が始まったのだが、今回は総勢十二体!二階から沢山の人形が降ってきて、正に夢空間。圧巻の景色だった。因みにダッチワイフでもない、メンバー兼ダンサーとのこと。女子供にも優しいダイブよ、ありがとう~といつも思ふ(大怪我にならないモッシュである)。終いには、新曲『涙のエアポート』で紙テープまみれ!初めて、今回昼飯を食べながらライブ前に紙テープを芯抜きで巻きなおしたのだが、超難しく、何回もテーブル下に転げて恥。

もはやこのバンドはどこ世代向けなのだろうと思ふが、世界でツアーしてきたサイコビリー睦氏だけに、その感覚のギリギリ感は凄いセンスだと思ふ。

デコトラの様に日本独自の進化を遂げた文化が私は好きだ。独特過ぎる日本文化、それを体現しているのが柳家睦&ザ・ラットボーンズなのではなかろうか。正月のデコトラカウントダウンを見た時の感覚とドンピシャだなと思っていたら、睦氏も見に来ていた様だった。ある人から見たら、異様に見えるものでも、自分からしたら絶妙のバランスで成り立つ美意識を感じるものでしかない。分かっていてのセンスが、アリアリなのだ。

正直格好つけてカリスマ性に満ちているバンドには、飽きているのかもしれない。勿論、上記の感覚は睦氏にも感じる。格好つけていて、格好いい。だけど、距離感として崇拝ではなく、グッと人間臭さ泥臭さがあり、しゃれが効いて、心打ってくる。その近さや自分達が凄まじく遂行していく力強さは、他力ではないからだろう。

アーティストだからって、すっ込んでないで、ファンサも完璧だし、話していても面白い。必ず次回チケットを自分達で売り、物販も秀逸デザインでほぼFUCK OFFと入っているか、ぎりぎりセンスの良いモノが多い。自統計として、フライヤーと物販がかっこいいバンドは、必ずや音もかっこいい訳だが、自分達だけでやっている人達の強さったらない。

とことん自分の美意識世界を貫いているデカチン歌手、柳家睦。結構御本人インスタの投稿での一文に、グッと来ているあたくし。非現実を味わえる空間へ、オイ日雇い!と怒られに、そして、あたくしも後ろ指さされても、中指立てて生きていこうと思います。マザファッカ!

佐藤一花

Creator

佐藤一花

1979年群馬県生まれ。文化服装学院卒業後、アパレル生産管理、販売などを経て、現在のオフィスアートレディ活動に至る。イラスト・コラージュ・立体作品を制作。群馬、東京、埼玉など全国各処で展示を開催。