この文章がみなさまの目にとまるころには、もう個展は終わっていることでしょうね。今は最後の準備に追われています。
ちょうど先週、縫製屋さんにお願いした分が上がってきたところで準備も最終段階です。そんな時に振り返るのはいかがなものかと思うのだけど、おもしろそうなので書いてみようかな、という軽いノリです。
人生すべからく気楽に、気軽に、無理なく、ゾロゾロとすることなく、でしゃばらず、良い人と関わって、おだやかに、ゆきたいものです。「ラッキー」という言葉がたくさん出てくるのは、ほんとうにそうなのもありますが、ゲッターズ飯田さんが「この時期はラッキーという言葉をたくさんつかってください」とYouTubeでおっしゃっていたのでその通りにしました。
ここに至るまでには色々あったのだけど、まずはじめに、生地が見つからなかった。この問題だけで2年以上かかった。
だらだらしていたのもあるし、繊維業界のことに関して僕はズブの素人だった。これを解決してくれたのが、桐生市の風花工房の板野さんという方だった。はじめはシルクの生地に活版印刷をして名刺をつくる、というオーダーをいただいたことがはじまりだった。
とにかくシルクと自然染料染めのことばかり考えている人で、まるで学者だった。色々あって、とある機織屋さんに眠っていた安くて上等なシルクを見つけてくれて、しかも裁断してくれる人まで紹介してくれた。ここで、まず生地の問題がクリアした。これはラッキーだった。
ようやく染めはじめて、少しずつ作品(のようなもの?)ができてくると、それらを「それらしい」ストールやスカーフに仕上げてみたいと思うようになった。
「どうしたらそれらしくなるのか?」
ふと思いついて、僕が桐生市の本町2丁目に物件を借りていたときにお世話になった帽子屋さんのcom+position(コンポジション)に行って相談してみた。
オーナーの齋藤さんは服や縫製、刺繍のことを知っていて「ふむふむふむ、なるほどなるほど」というわけで、あっという間に縫製屋さんを紹介してくれることになった。タグやブランドネーム、洗濯の表示のことなどをすごく丁寧に教えてくれた。
そしてタグは自分で活版印刷でつくって、さらにブランドネームも活版印刷でつくれることもわかった。齋藤さんはとにかくセンスがあって、「どんな方法でもカッコいいものはつくれる」ということを教えてくれた。普通なら取り合ってくれないだろうけど、やっぱりここでも活版印刷が役に立った。これまたラッキー!
というわけで本町通りのカネコヤさんでリボンを買ってきて、ハサミで切り、手キンでネームを印刷した。
その前の行程になるけど、すでにロゴマークはつくってあった。これも自分でつくった。少し話すと、『BLOSSOM』というロゴは英語なので、マークは少し和のテイストをいれたかった。大元のイメージはドラゴンボールの武道着に描かれている「亀」というマークで、幾何学的でシャープだけど暖かみがあり、薄めにスライスした和のテイストを感じられるようなものにしたいと考えていた。色々漢字を見ていたら、篆書体というのが向いているかなと思ってそれをアレンジしてつくった。
そして、ブランドネームを持って縫製屋さんへ向かった。特殊ミシンというものを使って、僕でも知っているような錚々たるブランドの服を手がけている人だった。
話は変わるけど「どこかで見たことがある人だな?」と思っていたら、なんと以前com+position(コンポジション)さんからの紹介で、活版印刷で名刺をつくってくれた人だった。
そして縫製の仕上がりに対して、僕は「手づくりの高級なシルクのスカーフ」という漠然としたイメージしか持っていなかったが逆にそれがよかったみたいで、2回ほどのやり取りで、うちのモノだけのオリジナルの縫製で仕上げてくれた。またまたラッキー!
以前から「お披露目とかやれば?」という声はいただいていたので、「まぁ、それもおもしろそうだな」と思い個展をやることにした。
「さて何処でやろうか?」
はじめてだし、ギャラリーでやるというほどでもない。なんといっても、せっかく足を運んでくれる人たちに、楽しんでもらえる時間と空間を提供できないと申し訳ないと考えていた。
ひと通り考えてみたものの、たいしたアイデアも浮かばなかったので、その問題はひとまず置いておくことにした。行き詰まったら他のほうを向く。少し寂しい言い方かもしれないけど、凡庸な人間にはそれ以外に方法はない。
やることは他にもたくさんあった。
商品を買ってくれた人へのお礼状づくり。これは普通の印刷。そのお礼状とリーフレットを入れる封筒にロゴマークを印刷。不織布の袋の印刷。それを入れる紙の手提げ袋の印刷。それから商品にぶらさげるタグの印刷。これらのものはみんな活版印刷によるもので、ブランドネームの場合のように、紙以外のものでもなんとか印刷できる可能性が高い。これもラッキーだった。
仕上がってきたストールの撮影とリーフレットのためのイメージの撮影をやることにした。これも自分でやった。
デジタルカメラは一応持っていたが、いまいち写真とカメラというものがわかっていなかったので、何冊かカメラと写真の本に目を通してみた。
そして、どうやら希望の写真を撮るには別のレンズがあると都合がいいことがわかった。ネットで色々探して、もう製造されていないがなかなか良いというレンズを中古で手にいれた。
レンズの種類としては単焦点のマクロレンズだった。商品の物撮りをしながら、リーフレットでつかう刷毛や筆などの染めで使う道具のイメージも撮影した。ついでに先に印刷したブランドネーム、タグ、封筒、不織布の袋、手さげ袋なども撮影した。近寄って撮影するときには単焦点のマクロレンズが役に立った。
撮影が済むと写真を選んでリーフレットの制作をはじめた。2つ折りのもので中の文章も自分で考えた。
この頃になると「なんでも自分でやるということも、まんざら悪いものではない」という気がしてきた。なんといっても気楽である。ほぼ自作。
これができることも、これまたラッキー!
続く
【レポート:GO ON編集人牧田】
11月6日(土)・7日(日)に日限地蔵尊観音院で開催された『手描き染め染色展』へ行ってきました。
ストールをご購入された桐遊さんぽさん。色と柄が素敵だとお話されていました。