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『スペース・ジャム』
僕の大好きな映画『スペース・ジャム』の続編の公開が決まって、ワクワクが止まらないので急遽、この映画のコラムを書くことにした。
現在では、カルト的な人気のある映画になってしまったが、僕にとって初めてのアメリカンカルチャーの体験であり、海外カルチャーを知ったのはこの映画を小学生の頃に観てからだ。
マイフェイバリット映画でありアメリカンカルチャーの教科書、それが96年公開『スペース・ジャム』だ。
『スペース・ジャム』はアメリカバスケットボールリーグNBAのスーパースター選手、マイケル・ジョーダンとアメリカの国民的アニメ『ルーニー・テューンズ』のキャラクター達がアニメの枠を超えて共演する夢の映画だ。
実写とアニメのクロスオーバー的作品で、「マイケル・ジョーダンとバックス・バニーがタッグを組んで、悪者をバスケでやっつける!」という子ども向けのコメディ映画だけど、僕はこの映画をただのコメディ映画として観てはいない。この映画は「マイケル・ジョーダンの半生」を追った異色の人間ドラマでもあるのだ。
実話をベースにマイケルが実際に経験した栄光と挫折を『ルーニー・テューンズ』のメンバー達と行動を共にしていく中で、マイケルが本当の自分を見つめ直していく。
「バスケとは?家族とは?親友とは?そして人生とは?」そんな問いを、観ている者に投げ掛ける愛溢れる1本なのである。
バスケの神様、マイケル・ジョーダンの栄光
バスケを知らない人でもマイケル・ジョーダンの名前は知っているだろう。
音楽界のMJことマイケル・ジャクソンが世界のマイケルであるように、スポーツ界のMJはまさしくマイケル・ジョーダンだ。
バスケの実績だけでも数々の栄光と記録、そして名声を手に入れた。
また黒人アスリートの現在までの活躍は、モハメド・アリに次ぎこのマイケル・ジョーダンの活躍が多いに影響しているだろう。
ストリートカルチャーにも影響を与えた人物で、何と言ってもエア・ジョーダンの誕生は世界に大きな衝撃を与えた。21年現在でもエア・ジョーダンの新モデルは作られており、毎回争奪戦になるほど未だその人気は落ちることを知らない。数々の栄光を手に入れたマイケルはスポーツ界のみならず、ファッション界にも影響を与え続けている。
そんなマイケルにも挫折を経験した過去がある。
スポーツ選手には必ず落ち目が来る、それは怪我や年齢には勝てないからだ。
この映画の面白い所は、そんなマイケルの落ち目の人生にスポットを当てているところだろう。
映画の始まりでは、すでにマイケルはNBAを引退し、なんとメジャーリーグに挑戦するところから始まる。知らない人も多いと思うが、マイケル・ジョーダンは引退後、野球に挑戦していたのだ。30歳を過ぎてからのメジャー挑戦に誰もが驚いた。ホワイトソックスの傘下にあるバーミンガム・バロンズに入団。マイナーリーグで、日本の野球で言えば3軍扱いだ。
NBAの大スターだったマイケルは、ほぼアマチュアと変わらない野球チームに入り、そこでも結果が出せず、やはり苦悩と挫折を経験する。
映画『スペース・ジャム』は、まさにマイケルの苦悩を描いているのだ。
ここまでで分かるように、この映画は単に子ども向けのコメディ映画ではなく、マイケル・ジョーダンの人生にスポットを当てたドキュメンタリー映画だと僕は思っている。
『ルーニー・テューンズ』がついに動き出す!
宇宙にある遊園地、モーロン・マウンテンではマンネリを解消するために「アホで、マヌケで、ぶっ飛んだ」新たなアトラクションを計画していた。そこで目にしたのが『ルーニー・テューンズ』。みんなが大好きな『ルーニー・テューンズ』を遊園地に呼び込む事ができたら、また客が増えるだろう。そう企んだボスは『ルーニー・テューンズ』を手に入れようとする。
ルーニー・テューンズ達は脅迫されたが、相手の宇宙人たちが自分たちよりも小さく、あざ笑う。相手が小さいことから、「バスケットボールで勝てたら何でも言うことを聞く」と条件を出した『ルーニー・テューンズ』。だが、宇宙人達は恐ろしい計画を企て、強大な力を手にするのだった…。
それに、恐れたバックス・バニーはNBAスター・マイケル・ジョーダンに目をつける。そして地球の裏側、つまり二次元ではバックス・バニーがマイケル・ジョーダンを奪還しようと計画する!
ゴルフ場でゴルフを楽しんでいたマイケルだが、ピンの中に手を入れた瞬間、穴の中に吸収され、『ルーニー・テューンズ』の世界に入り込む。まさにマルチバース!
そこでリーダー、バックス・バニーから説明を受け、宇宙のテーマパークを支配する悪の組織とバスケで戦うのだ!
試合は何でもありの状態で、真面目にプレイしているのはマイケルくらいで他の奴らはルール無視、連続ファール、審判暴行、そしてバックス・バニーがボールを持ちながら原付バイクでコートを疾走している姿をみれば、もはや清々しい気持ちにだってなる。
審判のマービンのセリフ「フェアに行こう!」がもはやギャグである。
それにしても、最高だ!マイケルが宇宙人とバスケ対決なんて、そんなの面白いに決まってるじゃん!マイケルがこんな子ども向けコメディ映画に出演を承諾したのは、きっと脚本が秀逸だったからだろう。実話をベースに、90分の映画でこんなにも内容が濃く、ただ単にマイケルだけではなく各キャラクター達にもしっかりスポットを当てている。
バックス・バニーだけではなく、ダフィー・ダック、ロードランナー、ワイリーコヨーテ、タズマニアンデビルなど、人気キャラも総出演なのだからまさにアベンジャーズ状態!
さらにあのビル・マーレイも本人役で出演している。
ビル・マーレイがノリノリでマイケルとバックス・バニーと一緒にバスケしてる姿を観れるだけでホッコリするよ。(終盤、最終兵器として登場するよ!)
こんなこと安っぽくて言いたくないが、まさに笑いあり涙ありの大傑作映画なのだ!
最後の大オチには誰もが泣いて、誰もが爆笑する大クライマックスが待っている。
「実話×マイケル・ジョーダン×ルーニー・テューンズ」
これのどれもが、バランス良く物語が進んでいく。
マイケルは野球に挑戦した時、こんな名言を残した。
『挑戦せずに諦めることはできない』
この言葉はこの映画の本質だ。
途中、ルーニー・テューンズ達がボロボロになるまで負けている時、マイケルはいつだって「諦めるな」と言い続ける。
僕も年齢を重ねるにつれ「安定した生活」なんて言葉が頭の中をよぎるが、人生の本質は挑戦することだと思っている。
いつだってやりたい事があったら、周りなんか気にせずに挑戦していこうと思う。
この映画のマイケル・ジョーダンのように。