今年の9月も栗を剥いた。昨年より多少は手際よく、膨大な手間と痺れる指に途方に暮れることもなく。季節を逃さずにまた昨年と同じことを出来ていることが嬉しい。回数を繰り返すほど確実に上達するから。栗は美味しさと栄養が皮と実の間にあるので、渋皮を残して甘く煮る。
地元秦野市に戻り1年。それまでは職場が変わるごとにその近所に住まいを移してきたが、ようやく根をおろすつもりで昨年ここにきた。ここでやりたかったこととして、地場で採れる旬の食材を求めて加工し、四季に応じて菓子やパンに変化させる。これがなかなか忙しい。旬と出盛りの時期は一時な上に、産直の売り場に並ぶ朝採りの農産物は前日の天候が悪ければ出荷も少なく、オタオタしていると買い逃して時期はすぎてしまう。
応じてスーパーで外来のアボカドやバナナだとか、時期外れのたとえば、夏ににんじん、大根、だとか、大好きで常備していたアイダホ産冷凍コーンなども手にすることがなくなった。地場産の季節の旬の野菜や果物はどれもむっちり、みっちり弾けそうに張りがあって照りがあり旨味がぎゅっと濃いし、持ちも良い。今まで私は野菜をそんな風に感じた事あまりなかった。やっぱり肉が主役だと思っていた。
ヨガを習い始めて2か月たった。1回目で、ああ、この感覚を長い間求めていたんだと感じた。過去でも未来でもなく今この瞬間だけに照準を合わせて、自分が自身を慈しむ。
言葉に並べてしまうとありきたりだし、ヨガの考え方を活字で読み、頭だけで納得することと、マットの上で身体まかせにポーズを練習しながら、先生の声が耳に届き脳や身体に染み渡っていくことというのは理解に雲泥の差があると実感した。
物心ついた時から極度に人に合わせたり様子を伺ったり、中心が自分ではなく他人軸で今までの人生の大半過ごしてきた自覚があるからこそ、初回のヨガレッスンで受けとったギフトは大きいものだった。
横ではなく縦に深く、自分を真下に掘っていく。今、興味のある事をどんどんやっていく。それが何になるか、どこにぶつかるか(あるいはかすりもしないか)はわからないけれど。人間も野菜や果物と一緒で常に今一瞬を生き切ることが、一番濃密で輝いている時間の過ごし方なのだろうと思う。
などと言って、ぎゅうぎゅうに詰めすぎて疲れて体力が落ちて、ぼうっとする日もよくある。食材は決まっていてもパンがつくりたいのかスコーンなのかクッキーか迷う時だってある。そんな惰性でものをつくっても美味しいはずがない。いかに疲れをリリースしていくかも、今後の人生の裏課題でもある。
昨年は栗仕事と金木犀で秋が終わったが、今年は無花果にも少し手をのばすことが出来た。特段好みではなかったドライ無花果をコンポートにしたらふくよかでうっとりするような出来上がりで、菓子にもパンにも混ぜたら美味しいだろうなぁ!というのをつくることができた。ぜひお時間があれば試していただきたい。
<おまけレシピ 無花果のコンポート>
(材料)
・無花果5個・シナモンスティック1本・八角2個・クローブ5個
・白ワイン300・水135・ざらめ糖135・レモン汁15
(つくり方)
(1)白ワインからレモン汁までは鍋にはかって混ぜておく。
(2)スパイスを入れる。
(3)落し蓋をして中火にかけて沸いたら火を止めてそのまま冷ます。
冷やしていただく。残ったコンポートの漬け汁でドライ無花果を煮た。