Column

北の国へ Part1

kobayashi pottery studio

今年3月、俳優の田中邦衛が亡くなった。

このニュースを聞いた時とても驚いた。田中邦衛といったら『北の国から』だろう。
『北の国から』はご存知のとおり北海道・富良野を舞台にしたドラマだ。その富良野へ、私は2016年のゴールデンウィークに訪れた。

富良野・美瑛は一度訪れたいと思っていた場所で、念願の旅行だった。特に日本とは思えない美瑛の風景に、とても魅力を感じていた。

なぜその風景に惹かれたのかというと、初めての海外旅行で訪れたイギリスでの体験が理由だ。ほとんどロンドン滞在だったが、1日だけ日帰りでストーク・オン・トレントという街へ行った。

そこはロンドンから電車で2時間ほどの場所で、陶磁器ブランド『ウェッジウッド』などの工場があるイギリスの陶磁器産地だ。その道中、電車の車窓からみた丘陵地帯の風景は、私がイメージしていた「異国の地・ヨーロッパ」そのものだった。頭の中では『世界の車窓から』のテーマが流れ、今までテレビや雑誌でみていた風景を目の当たりにした事が、大変感動したのだ。そんな感動したイギリスの風景と美瑛の風景は、重なるものがあったのだ(あくまで私個人の感想である)。

富良野・美瑛への旅行を決めたのが3月、すぐに飛行機や宿を手配した。旅行までに1ヶ月半の期間があるのでガイドブックを購入し、行きたいところをチェックしていた。何かもう少し旅行気分を盛り上げようと思い、富良野といったら『北の国から』だろうということで、テレビシリーズのDVDを借りた。

実は今まで『北の国から』をみたことがなかった。唯一みたのは、2002年の『遺言』だけ。『北の国から』の完結編だ。初めは「旅行気分を盛り上げよう」という思いでみはじめたのだが、徐々に『北の国から』の魅力にハマっていった。

黒板五郎、純、蛍の親子兄妹3人が、富良野・麓郷の雄大な自然の中、それぞれ情けないくらい不器用で踠きながら必死に生きていく姿に、胸が締め付けられるほど愛おしい気持ちになっていた。

そして旅行は、当初の目的とは違ったものになった。富良野・美瑛の景色をみたいというのが目的だったが、すっかり『北の国から』のロケ地巡りが目的となった。1日レンタカーを乗り回し、黒板家が住んでいた歴代の家がある「六郷の森」や「富良野駅」。五郎の幼馴染「中ちゃん」の中畑木材は今も建物がそのまま残っている。

『北の国から』は1年を通したストーリーで、四季折々の景色をみせてくれた。今はなかなか難しいが、また春・夏・秋・冬それぞれの季節の表情をみに富良野・美瑛を訪れたい。

余談だが、私が岐阜県の陶磁器の学校へ通っていた時、同期の友人4人で廃業した製陶所を工房として借りていた。その大家さんは、なんと田中邦衛の弟と同級生だという。
そう、田中邦衛は岐阜県土岐市出身なのであった。

Creator

kobayashi pottery studio 小林俊介

群馬県太田市出身。美濃焼の産地である岐阜県多治見市で陶芸を学び、陶磁器メーカーでデザイナーとして従事。2018年、地元太田市にてkobayashi pottery studioを設立。「暮らしに寄り添ううつわ」をコンセプトにうつわの製作をしている。