Column

棺桶まで持っていきたい

kobayashi pottery studio

自分では飽きっぽい性格だと思っていたのだが、一度気にいると結構一途なところがある。子どもの頃に家族でよく行った中華店で、お気に入りのメニューが2つあった。お店に訪れる度に、そのメニューを交互に注文していた。お店に入店するや否や母親に「今日はどっち?」と聞かれる。それを7歳から15歳くらいまで続けていた(15歳以降、家族で中華店に行かなくなったのだ)。

「FREITAG(フライターグ)」、このブランドを知ったのは今から13年ほど前。ロングライフデザインを提唱し、D&DEPARTMENTを立ち上げた“ナガオカケンメイ氏”の著書で紹介されていたのを見たのが最初だった。

1993年にスイスのフライターグ兄弟が、使用済みのトラックの幌(タープ)を利用して、バッグなどを制作したブランド。広げられたトラックの幌にデザインを考えながら型紙を当ててカット。そこからつくられたバッグは、1つとして同じ柄の物が無い。 またバッグのベルトは自動車のシートベルトを再利用。生地のヘリの部分は、自転車のインナーチューブで補強。部材のほとんどがリサイクルなのだ。私はこの1つとして同じ物が無い、そしてリサイクルの部材で制作するという「FREITAG」のコンセプトにすごく感銘を受けた。

一度実物を見たい。どこで扱っているのかネットで検索するも、なかなか取扱店舗がなかった。当時は岐阜県在住で、名古屋にかろうじて取扱店が1店舗あることを知り、早速休日にお店へ向かった。

ようやく実物の「FREITAG」のバッグとご対面。
「おお〜なんてカッコ良いんだ」。
カラフルな色、使用済みのトラックの幌を使用しているので、所々に汚れやキズがあるが、それがまた唯一無二の存在の証。
しかし先にも説明したが、同じ柄のバッグは存在しないのが「FREITAG」。この目の前にあるバッグ以外にまだ見ぬ柄のものが存在する。しかしこの近郊で取り扱っているお店は無い。思い悩んだ挙句、その日は購入を思いとどまり帰宅した。

初めて購入した「FREITAG」のメッセンジャーバッグ

「さて、他の店を探しに行こうか、、、」と悩む。
数日間考え、もう一度名古屋のお店に向かい、ずらっと並ぶバッグを眺める。そのお店で扱っていたアイテムは8〜9アイテムで、1アイテムにつき3〜4柄(色)が店頭に並んでいた。欲しいアイテムは決まっていた。幅36cm・高さ33cmほどあるメッセンジャーバッグ。
「FREITAG」の代表的なアイテムだ。
「どうしよう。目の前にある4柄(色)の中から選ぶか、他の店を探して見にいくか」。
自分の記憶では、1時間ほどそのお店で悩んでいた。

のちに「FREITAG」好きの方の話を聞いたのだが、自分の好みのバッグを探すために、10店舗以上回る人もいるらしい。1県で扱い店舗が2〜3店舗あるか無いかのこのブランド。10店舗以上回るということは、県をいくつも回って探すということだ。

1時間ほど悩んだ結果、目の前にある4柄の中から1つを選ぶと決意する。そして私の好きなブルーを基調としたバッグを購入。めちゃくちゃ興奮した。

それから13年。その後、幾つかバッグを購入するも全て「FREITAG」。現在7点のバッグを所有。それぞれサイズなどが違うので、時折使い分けをしている。トラックの幌を使用しているので全天候型で、多少雑に扱っても大丈夫。使い込むことでより一層愛着が出てくる。そしてダメージが気になる場合は、取扱店に持っていけば補修も可能。お気に入りのバッグを何年も使えるのだ。

全て「FREITAG」

初めて購入したメッセンジャーバッグは今も手元にある。今では使用頻度は少ないが、これは絶対手放せない。なんなら棺桶に一緒に入れて欲しいくらいだ。それだけ愛着があるバッグなのだ。

使い込むことでより一層愛着が出てくる

Creator

kobayashi pottery studio 小林俊介

群馬県太田市出身。美濃焼の産地である岐阜県多治見市で陶芸を学び、陶磁器メーカーでデザイナーとして従事。2018年、地元太田市にてkobayashi pottery studioを設立。「暮らしに寄り添ううつわ」をコンセプトにうつわの製作をしている。