Column

無二無三展、後記

佐藤一花

無二無三:一つの物事に心を傾けてそれに打ち込むさま。

令和5年1月14~15日にかけて行った展示『私達の現代服装史』が終了した。今回は、そのあとがきである。

友人であるたまちゃんは、私の本当の友人だ。小3だろうが友である。小学校入学前から、一緒に展示をやろうと云っていた。相談や説明は私の方が言葉打率高いし、彼女の方が輪廻転生は多いだろう。気づかいもあり、我がままも云わない。きっと彼女なら、最後までなんとかなるのではと思ったが、本当にそんな展示になった。

今回、特に彼女の想い出作りとかそんな訳でもなく、対等にできるかと思い実際にやる事にした。彼女が描くモノ、私が作ろうと思ふモノがきっとマッチするのではないかと思ったからだ。

まず彼女がやったことのない世界が良いし、他者でできにくいモノは、ファッションなのかもしれない。そんな望みで、服飾を主軸に構成した。はて自分はどんな素材でコラージュしようかと考えていた時、ハイブランドの紙袋がメルカリで売られている事を知った。そこまでに日本人がブランドに固執する気持ち、一方では、大量に捨てられる時を待つどうでもいい紙袋達がどこの家にも在る事が重なった。

誰もが見て分かるロゴ、大量消費されていく服や紙袋、それを皮肉めいて、しかしたまちゃんのペイントで純粋度を高めて塗りつぶし、エレガントの象徴ハイブランドちゃんや消費社会、拝金主義みたいな部分をパンクにたまちゃんがぶっ壊してくれたら良いと思った。なのでギャルブランドも混ぜ込み、できるだけブランド達がぶつかる様にコラージュで服やバックを本物に近い形で制作した。本物の様だけど、ブランドのショッパーで構成される偽物達。

学生の頃、抜群にお洒落な子でも財布はヴィトンのモノグラムだったり、何故だろうと不思議で仕方無かった。当時アバンギャルドが謳歌していたのに、ギャルと同じブランドモノ。私はそんなのが嫌で、ヴィトンを持つくらいならと、財布を落とした1カ月位をジップロックやビニール袋で過ごしていたのを想い出した。

制作も佳境の12月後半に、ヴィヴィアン・ウエストウッドが亡くなった。精神的パンク党員である自分も、パンクスの格好はせずしても大きいショックで有った。パンク精神としてあがるのは、反権威主義、DIY主義、不服従、直接行動とかだろうか。直接的に大きい動きが個人では出来なくとも、自分達で表現し異端を恐れず、それを口に出し表す事、今で言う尖り・癖みたいなものをせずにして、何も始まらない気分になっていた。

自分の制作動作とパンク精神が、この展示に妙に重なっている様に思えて仕方なかった。自分の表現は、至って新しくも無いし、技術的にどうだとかは分かっている。パンクス達が普通のシャツやニットに大量の安全ピンを刺して、自分の個性を表現していった様に、自分達でやろうと思えば、容易く意義主張は作れるものと云うのを体現していたに近い。

それでも純粋な表現や、やりたいこと、自分の想いを伝えていない奴が、やっている奴には敵わないのだ。そう考えると、早々にたまちゃんはやっているので、敵わないんだ。と、一周巡って着地した。アーメン。そんな訳で「2人で作る服の歴史、私達が着たいと思ふ服を作る未来」って銘打ってぴったりだったなぁと肯定感アゲになりますた。

たまちゃんの純度高めのペイントのお陰で、独りエロ本を切り抜いてコラージュする40代の女が、皆に少し「わ~楽しい、凄い~!」とランランして貰え、これからの身の振り方改めねばならぬの気分になっております。

おっぱい言われ過ぎていましたので、こんな方向もまた可能なんだとね。それ程どれほど、子どものひと筆にはパワーが籠っていると云う事なんだと感じまくっていました。正にDIY精神と直接行動。そして、圧巻の集中力。独りでこさえた作品も多数なんだから。

傘やネックレス帽子など、一緒に居れば文化デザイン科の2年目が行う立体裁断の要領で、更にテクニックが居る紙をトップスにだって、仕立てられる。黙々とやる、四の五の言わない。カッコよかったよ、たまちゃん。だから、際っ際のぎりぎりでOK。大外れすら、愛おしい可愛さや個性になる事を、心傾けて打ち込む時間で、共に感じられたかしら。

ふらっと見てくれた来場者の何人かが、降りて来た途端に爆上がりして、たまちゃんに「素晴らしかった~」を説明している様をみて、それもまた嬉しかった。想像を超える発想をいつもありがたう。巡回展募集中で御座います。2人で即興ライブペイントとかやりたいね、目だし被ってグラフィティでもええ。「KT」佐藤一花と中村環のユニット、神出鬼没でこれからも御贔屓に。

佐藤一花

Creator

佐藤一花

1979年群馬県生まれ。文化服装学院卒業後、アパレル生産管理、販売などを経て、現在のオフィスアートレディ活動に至る。イラスト・コラージュ・立体作品を制作。群馬、東京、埼玉など全国各処で展示を開催。