Column

現在・過去・未来、そして1分

GO ON編集人

昔PUFFYが「タイムマシンがあったら過去と未来どっちに行きたいか?」という質問に対して「過去。だって未来には行けるから」と答えていた。この答えを聞いた時、私は衝撃を受けた。なぜなら当時の私は、過去へ行く意味が分からなかったから。ところで、タイムマシンはいつできるんですかね?

先日ウォン・カーウァイの『いますぐ抱きしめたい』と『欲望の翼』をみた。両作品とも素晴らしいのだが、一昨年のWKW祭りほどの盛り上がりはなく少し寂しい。今月はその2作品の感想文。

WKW版『男たちの挽歌』

クリスマスイブに『いますぐ抱きしめたい』4Kレストア版(1988)を鑑賞。WKWのデビュー作(監督・脚本)だ。WKW監督作品だと言われなければ正直分からないだろう。『男たちの挽歌』と男女のメロドラマを足して割ったようなストーリーだった。

アンディ・ラウとマギー・チャンはいとこ同士なのだが、いとこ同士の設定ってあるあるだなぁと。『ストレンジャー・ザン・パラダイス』もいとこ同士だったし、おばさんから電話がかかってきたし。

注目すべきところは、今後のWKW作品で目にする印象的なシーンがすでに差し込まれていることだ。テーブルで黄昏れるマギー・チャン、紙飛行機を飛ばすマギー・チャン、水の入った瓶の中にマギー・チャンが錠剤を落としてしまったことに気づかず、その水を飲んで「味がおかしい」と言うアンディ・ラウ、ジュークボックスにコインを入れるアンディ・ラウ……。

これらのシーンは『恋する惑星』を思い出させた。最後の襲撃シーン。主要な人物の動きに対して周りのスピードが速い撮影方法も同様。きっちりストーリーが成り立っているので台本があったのだろうか。それともそういった撮影方法は次作『欲望の翼』からだろうか。気になるところ。

爽やかさと色気をまとうアンディ・ラウ。ブリーフではなかったと思う。あどけなさが残るマギー・チャン。肺が悪い役なのにタバコを吸う強者っぷり。単純な物語だけれど、『男たちの挽歌』要素では手に汗を握り、男女のメロドラマではハラハラしつつも2人の電話ボックスキスシーンにうっとりした。ラストシーンは嫌いじゃないけど「ちょ、これで終わり」感はある。

鑑賞後、なんだかノスタルジックな気持ちになってしまい、過去のあれこれを思い出してテンション下がりまくり。そのせいか令和ロマンのメガネのほうが昔付き合ってた人にみえてしまい、ちょっとときめいた。

生涯忘れることのない1分

12月29日に『欲望の翼』4Kレストア版(1990)を鑑賞。美しい映像、セリフにめまいがした。撮影はクリストファー・ドイル。

「時計を見ろ」
「どうして?」
「1分でいい」
ヨディの腕時計を黙って見つめる2人。
「1分経ったわ」
「何日だ」
「16日」
「1960年4月16日3時1分前、君は俺といた。この1分を忘れない」

「彼を忘れるには、あの最初の1分から過ぎた時を全部忘れないと」

レスリー・チャン、マギー・チャン、カリーナ・ラウ、アンディ・ラウ、ジャッキー・チュン、トニー・レオン。ひとつのスクリーンで、この役者をみることができるなんて当時も今もすごすぎる。しかも全員片想いの物語。

レスリー・チャンがマギー・チャンをナンパする時の距離感がおかしすぎて鼻血。レスリー・チャンは母親に恵まれないメンヘラ気質だから本気で女を愛せないタイプ。

マギー・チャンとアンディ・ラウの2人のシーンは『いますぐ抱きしめたい』の続きじゃん!って興奮して2人が結ばれることを祈ったが、公衆電話のベルが鳴る頃は、時すでに遅し……。

胸熱だったのは、レスリー・チャンとアンディ・ラウのシーン。この2人が同じスクリーンの中にいる!そしてレスリー・チャンへ投げかけた最期の質問にヤラレタ。

「女友達によく質問された。覚えてるか?去年の4月16日の3時に何をしてたか」
「その女といた」
「覚えていたのか」
「肝心な事は忘れない」

レスリー・チャンもトニー・レオンも髪をピシッとキメるタイプ。そしてアンディ・ラウの筋肉に再びめまいが。『いますぐ抱きしめたい』をみてからアンディに夢中。現在アンディもトニーも還暦超え。え!?マジです。

たった1分

『欲望の翼』のように人生なんてたった1分で変わってしまう。たった1分だ。

・0.1秒のエクスタシー(汚れた英雄)
・ザー雨が過去を洗い流す1分前の過去2分前の過去(かせきさいだぁ 相合傘)
・襲撃時間は2分間(レザボア・ドッグス)
・3分間でさようならはじめまして(東京事変 能動的三分間)
・できあがりまで8分(最強どん兵衛きつねうどん)
・ふたりの距離は0.1ミリ6時間後、彼女は彼に恋をした(恋する惑星)

時間とは、1分とは。もはや愚問でしかないが、ただただ1分の重みに気付かされる。

「タイムマシンがあったら過去と未来どっちに行きたいか?」

2023年12月31日に戻りたい。

Creator

GO ON編集人 牧田幸恵

栃木県足利市在住。グラフィックデザイナー、タウン情報誌等の編集長を経て2020年12月にGO ONを立ち上げた。