Column

勝手に妄想映画館 15

GO ON編集人

20代の頃、夢中になった映画はいくつかあるが、この二作品は群を抜いていたのではないだろうか。なぜ、あんなに夢中になったのか。あの時と同じ気持ちでみることができるのか。期待と不安が交差する人間交差点的な私の脳内。『バッファロー’66』と『アメリ デジタルリマスター版』の感想を綴りたいと思う。

みんな夢中になったヴィンセント・ギャロ

1999年、渋谷パルコシネクイントのこけら落としで、友人のユミと一緒にみた思い出。

革ジャン、ボーダーのタンクトップ、半ケツよろしくローライズのパンツ、赤いショートブーツでポケットに手を突っ込み猫背で歩くヴィンセント・ギャロ。現在62歳。

むっちりボディにブルーのアイメイク、頭の悪そうなココアが好きなクリスティーナ・リッチ。現在43歳 (私の1個下じゃん!) 。

ボーリング場でタップしながら踊るムッチムチのクリスティーナ・リッチ。
証明写真を撮る時のクリスティーナ・リッチの変顔。
俯瞰で撮ったベッドシーン。

…そのくらいの記憶しかなく、一体どんな話だったのか全く覚えていなかった。当時、とにかくギャロに夢中だった。PEANUTS BAKERY laboratoryの長谷川渚さんはギャロの似顔絵をよく描いていた。身近で最もギャロのファンだったのは、渚さんではないかと記憶している。

1999年かぁ…『1999年の夏休み』→深津絵里→モーマスと連想する24年前の映画だ。

冒頭のシーンで、トイレに行きたくて悪態をつくギャロにニヤニヤする。だがしかし、ギャロが親に電話するシーンで「コイツすげーめんどくせー奴だな」と思ったが、それは序の口にすぎなかった。コイツ、ずーっとめんどくさい。つーか、ただのメンヘラ男じゃねーか。クリスティーナ・リッチもどーかしてる。ギャロのことを「本当はやさしい人」とか言っちゃって、将来DVで苦労するよ、マジで。

キレるけど謝る人を「本当はやさしい人」って思ってしまうのは典型的なアレだ。そうアレ。公開当時「子どもみたいなギャロを包むクリスティーナ・リッチの母性」とか思って胸をときめかせてしまった自分を恥じるよ。

当時の私は、まだメンヘラ男に出会ってなかったから分からなかった。その後メンヘラと付き合って痛い思いをしたから、今ならよーく分かる。そんな男(通称、内面カート・コバーン)はやめとけって。目を覚まして、私。それに日本版のキャッチコピーが「最悪の俺に、とびっきりの天使がやってきた」なんだけど!ダサすぎて恥ずかしいことに気づいて私。

当時、なぜこの映画がもてはやされたのか。
なぜ雑誌はギャロ特集ばかりだったのか。
エンタメの罠ですか?

この映画に、そしてギャロに何ひとつ共感できなくなった私は、大人になったんだと思う。

さようなら、ギャロ。もう何も感じなかったわ。内面カート・コバーン男、マジで勘弁!

『アメリ』事件は一生忘れない

日本での公開は2001年。22年前。私は22歳だ。当時、有楽町の駅前にあったミニシアター、シネ・ラ・セットで付き合っていたM君とみにいった思い出。

『バッファロー‘66』で受けたメンヘラギャロショックを引きずっていて「アメリも単なるメンヘラ女の映画じゃん」ってなったらどうしようと思いながら映画館へ向かった。

冒頭、アメリの子どもの頃のエピソードが流れるのだが、そこでアメリは73年生まれだと知る。公開当時は「子役かわいい」しかみていなかったけど、けっこう暗い過去を背負った子どもだったのだね。

私はカフェの常連客の1人で、いちいち録音する男(ドミニク・ピノン)が1番好き。アメリマジックにかかってもメンヘラストーカー男のままなのがウケる。その男の元カノが、ニノのポケットに紙切れを入れるところをみて👍ってやるところが一番好き。当時も笑ったし今回も笑った。

おもしろくてかわいいけれど、まわりくどいアメリに後半はイライラした。でも、ニノみたいな変わった男はアメリみたいな手法が好きなはず。

人の家に勝手に入ったり偶然を装う姿は『恋する惑星』のフェイ・ウォンそのもの。途中ゴム手袋をはめるシーンがあるのだが、私はそこで『恋する惑星』だと確信した。

〈幸せになる映画〉というよりも〈人生が楽しくなる映画〉だと感じた。22年経っても鑑賞後は笑顔になった。

美術学校の授業でジャン=ピエール・ジュネの『デリカテッセン』をみたことがある。オープニングかエンディングかの見せ方が、すごくカッコよくて映画は本編が重要だと思っていたけれど、隅々までみなきゃダメなんだ!と気づいた授業だった。うろ覚えだが、食品のゴミに出演者の名前が書いてあったと思う。『アメリ』も同様で、特にエンディングの出演者の見せ方は最高!最後の最後に参りましたってなる。

冒頭で述べた付き合ってたM君とみにいった思い出話に戻る。

友人から「幸せになる映画だよ〜」と言われて映画デートで行ったにもかかわらず、鑑賞後M君とケンカした。脚本家を目指していたM君は、脚本家目線なのか知らないが「この映画の何がいいの?」と言ってきた。帰りの電車の中でパンフを開いて映画を反芻する私に向かって「恥ずかしいからやめてくれるかな」とも言った。

普段はやさしいM君。映画でケンカしたのは『アメリ』と『ピストルオペラ』の2本だけだ。『ピストルオペラ』は置いておいて、なぜ『アメリ』に怒ったのか?22年経った今、ようやくその答えが分かるかと思ったが、やはり分からないままだ。

M君は『アメリ』をみたのかな?っていうか生きてるのかな?当時、ダッフルコートを着るとヨン様に似ていて大好きだったよ。でも『アメリ』事件は一生忘れないからな!

というわけで、今月の私の妄想映画館では『アメリ』と『恋する惑星』を上映したい。恋愛中はだいたい頭がおかしいのだから、何も考えず物語に没頭しようではないか。そして昔の自分を成仏させたい。

Creator

GO ON編集人 牧田幸恵

栃木県足利市在住。グラフィックデザイナー、タウン情報誌等の編集長を経て2020年12月にGO ONを立ち上げた。