Column

勝手に妄想映画館 12(後編)

GO ON編集人

次号に続く、と書いたのが5月16日。現在7月。記憶が遠い彼方へ逝ってしまったのだが、細い記憶の糸を辿りながらこのテキストを書いている。興味があれば前編とともに読んでほしい。

ユーロスペースを出て北千住にあるシネマ ブルースタジオへ向かう。空腹のせいか足元がおぼつかない気がした。映画の前にガストで<たっぷりマヨコーンピザセット>を食べたにもかかわらず、だ。私の胃袋はどうかしている。ねぎしを見つけて吸い込まれるように階段を降りたが、激混みすぎて即撤退。結局、北千住駅構内のてんやで、天丼とそばのセットを食べた。とりあえず腹持ちすればよい。

マルイがある方に降り、商店街を5分ほど歩くとシネマブルースタジオに到着した。東京芸術センター2階にあり、映画スタジオ形式になっている。名画が1回1,000円で観られるのは非常にうれしい。ここは通う価値あり。

今回は「鈴木清順の美学」といった特集が組まれていて『殺しの烙印』と『ピストルオペラ』が上映されていた。両作観たかったけど、『ピストルオペラ』が上映されることは稀なような気がして、そちらへ足を運んだ。

『ピストルオペラ』といえば、忘れられないエピソードがあるので聞いてほしい。公開当時(2001年)付き合ってる人と観に行ったのだが、相手が「訳がわからない!」と怒ってケンカになったのだ。普段は穏やかでやさしい人なのに、納得のいかない映画を観ると激怒する人だった。ついでに言うと、『アメリ』を観た後もケンカになった。「恥ずかしいから電車でパンフレットを開かないで!」と言われる始末。「アメリを観ると幸せな気持ちになるよ」と友人に勧められたにもかかわらず、だ。私はこの人とのケンカエピソードを一生忘れないと思う。

さて、『ピストルオペラ』。EGO-WRAPPIN’『サイコアナルシス』がオープニングで流れるとテンション爆上がり。もう、ぶっ飛び具合が半端ない。観客なんて置き去り。この作品の時、鈴木清順は77歳なのだが「人の映画を観て影響を受けるなんてことは、まずないよ」という言葉通りで、晩年の鈴木清順ヤバすぎってニヤニヤが止まらなかった。ちなみに、この4年後に『オペレッタ狸御伝』ですからね。

『ピストルオペラ』の見どころは、誰がなんと言おうと山口小夜子だ。<俺たちの小夜子(宇川直宏)>。江角マキコとモデル対決みたいな絵面が続くのだが、やっぱり山口小夜子ばかり追ってしまう。

しかしここで、とんでもない娘が登場。その名は韓英恵。当時10歳、鈴木清順が芸名をつけたとのこと。<恐ろしい子!(ガラスの仮面)>。でももっと恐ろしいのが、山口小夜子を「おばさん」呼ばわりしてしまうこと。ちょっと待って、小夜子だよ!<俺たちの小夜子(宇川直宏)>だよ。韓英恵、大丈夫?映画の途中から韓英恵の将来が心配になって、例のヌードシーンなんてどうでもよくなった。が、しかし韓英恵は現在も素晴らしいし『菊とギロチン』は最高だから観てほしい!

『ツィゴイネルワイゼン』に続いてなんだかかわいい樹木希林、またもや盛大にやってくれました桜吹雪。清順ワールドが映し出されるたびに意識が遠のいた。

そして最高すぎるラストシーン。
江角マキコの「屍体は私だけのもの」、富士山ドーン、平幹二朗の顔の上に「終」の文字。なんという爽快感!

こだま和文の音楽もたまらない。ダブトランペットと三途の川の相性は抜群だったよ。

今年は鈴木清順生誕100年記念なのだが、なかなか特集のアナウンスがなくて残念…。いつまでも待ってるから!

映画館から出た私は、『サイコアナルシス』の歌詞のように「俺は素面だ酔ってるのは路面」よろしくおぼつかない足取りで駅に向かうのであった。

前編を読む。

Creator

GO ON編集人 牧田幸恵

栃木県足利市在住。グラフィックデザイナー、タウン情報誌等の編集長を経て2020年12月にGO ONを立ち上げた。