Column

今月の『ちょっと思い出しただけ(松居⼤悟)』

GO ON編集人

9月20日、宮沢章夫が亡くなったことをTwitter経由で知る。私は熱心なファンではないので、詳しいことはほとんど分からない。「名前は知っている。なんとなく名前に反応してしまう」程度だ。「突然死ぬ人と簡単に死なない人がいるのはなぜか」って思いながら宮沢章夫のことを考えていた。そうしたら、なぜか芋づる式にアレコレ思い出した。今月はそんな『ちょっと思い出しただけ』の話を聞いてほしい。

宮沢章夫の名を聞いて思い出すのは遊園地再生事業団と池袋シネマロサ、そして冨永昌敬監督の映画『亀虫』。特にシネマロサの記憶が鮮明だ。なんでかなぁと思ってインターネットを彷徨っていたら、この映画を見つけ出した。宮沢章夫が総監督を務めたオムニバスシネマ『be found dead』。当時シネマロサで上映しており、そこで働いていた友人に誘われて鑑賞したのだ。DVDのジャケットをみて少しずつ記憶が蘇る。死体の話で埼玉県北部利根川付近の馴染みのある地名が出てきたような…。その中の1つに冨永監督の作品があったから興味を持ったのだろう。

ん?当時の私の気になる度合いって、冨永昌敬>宮沢章夫になっている。きっと『亀虫』がおもしろかったのだ。『亀虫』…。環状線沿いの話だったと思うが、それしか思い出せない。

冨永監督の作品は、『パビリオン山椒魚』『コンナオトナノオンナノコ』『パンドラの匣』をみたと思う。ほとんどがシネマロサかもしれない。冨永監督の映画と聞くと菊地成孔に辿り着いてしまうのだが、理解していただけるだろうか。

『コンナオトナノオンナノコ』を「台所の流しで身体を洗うやつだ!」と思い出してインターネットを彷徨う。小田エリカと桃生亜希子。知り合いでもないのに「元気かなぁ」なんて考えていたら桃生亜希子の苗字が<ものう>であることを知る。20年以上<ももう>だと思っていた。恥ずかしい。

桃生亜希子と聞くと麻生久美子に辿り着く。一時期この2人は写真集を出したりしていたと思う。苗字に<生>が付いてるのだがこれが関係しているのか?オムニバス映画『SF Short Films』。映像作家の中野裕之が監督しているやつだ。その中の『Slow is Beautiful』は名作というか麻生久美子の完璧なPV。はぁ、かわいい。

「マジでツインテールって何歳までOKなの。麻生久美子になりたいんだけど」なんて考えていたら、『オリバーな犬、 (Gosh!!) このヤロウ』の日ってことでTVへ。

スベンソン嵐子役の松たか子に中毒性を感じるが、一番好きなのは丸い頭のプードルを抱いている永瀬正敏かな、なんてクスクスやってたら、ちょんまげ姿の麻生久美子が出てきた。

宮沢章夫が死んで麻生久美子がちょんまげになる時代。

「突然死ぬ人と簡単に死なない人がいるのはなぜか」の答えが見つかりそうな気がした。

後日、ラジオ『高橋源一郎の飛ぶ教室』で大竹まことが「宮沢章夫の才能にひれ伏すしかなかった」と繰り返し言っていた。私がシティボーイズを知ったきっかけは宮沢章夫ではなく、三木聡や細川徹あたりだったので、ラジカル・ガジベリビンバ・システムのおもしろさを全く知らない。大竹まことの話を聞けば聞くほど、宮沢章夫演出のシティボーイズをみたくなった。

みなさんは、宮沢章夫の死から何を思い出したのだろうか。よかったら教えてほしい。

【追記】
PIRATE RADIO第598回 彼岸からの言葉 宮沢章夫 選曲構成桑原茂一
私が死んだら誰かこういうの作ってくれないかな。こんなふうに追悼されたい。

Creator

GO ON編集人 牧田幸恵

栃木県足利市在住。グラフィックデザイナー、タウン情報誌等の編集長を経て2020年12月にGO ONを立ち上げた。