Column

轟音紙版第1号 編集後記(長編)

GO ON編集人

とにかく続けろ

ひとりで活動していると、時折「私は何をやっているのだろう」と心にぽっかり穴が開いてしまうことがある。GO ONを始めて1年8ヶ月足らずだが、ほぼ毎月その現象は起こりうる。人に頼まれてやっていることではないので、いつだって止められる。にもかかわらず「私は何をやっているのだろう」と思いながら、原稿を書いたり取材に行ったり本をつくったりしている。

そんな時、頭に思い浮かぶ言葉はただひとつ「とにかく続けろ」。

当誌のキャッチコピーである「轟音のごとくGO ONする」は、そんなに深い意味を考えず軽い気持ちで付けたものだが、気づくと私を励ます最大のパワーワードになっていた。

20年以上社会人をやっていれば自分の力量も分かるし、「これ以上は死」という境界線も分かる。そんなふうに自分のレベルを見極めながら「どうしたら続けられるのか」と常に考える。

「とにかく続けろ」を無視すれば、いくらでも好きなことはできる。大人になるにつれて分かってきたことだが「やりたいこと」は大体できる。しかし最も難しいことは「やり続けること」だ。続けるために必要な資金、アイデア、読者、流通…。それらを無視すれば「やりたいこと」は大体できる。ただし、一度だけだろう。

才能がある人ならば、いわゆる「一発屋」になったって、それは伝説として語り継がれていく。例えば映画監督の長谷川和彦。『青春の殺人者』(1976年監督)『太陽を盗んだ男』(1979年監督・脚本)。たった2本しか監督作品がないのに、しかも40年以上も作品を撮っていないのに伝説として語り継がれているし、ファンはまだ最新作を待っている。当然、私もそのひとりだ。

私には長谷川和彦のような才能なんぞ、1ミクロンも持ち合わせていない。だから、才能がなくてもできることを探す。それが「とにかく続けろ」だ。方法を考えれば、誰にだってできることだから。

「轟音のごとくGO ONする」。改めていい言葉だなって思う。

紙とかWebとか

今回、轟音紙版を出したことで多くの方から「紙はいいね」とコメントをいただいた。当然、私もそう思う。でも正直、紙でもWebでもどっちでもいいと思っている。

タウン情報誌の編集長をしていた時に、当時はフリーペーパーを発行していたのだが「もう紙って終わりじゃない?これからはネットでしょ」と何度も言われた。なんなら「フリーペーパーって資源の無駄遣いじゃないの?」と言う人もいた。そのたびミーティングで「紙かWebか論争」が巻き起こり、馬鹿馬鹿しくて「パピルスの説明からしましょうか」と言って上司をイラつかせてやった。

私がWebマガジンにした理由は、先に述べた「とにかく続けろ」につながる。私の力量で継続させる方法を考えると、Webしかないからだ。月刊で紙を発行したら「これ以上は死」の境界線を越える。

轟音紙版の構想を練っていた時、ある本に出会った。『アフリカ』第12号(2011年10月号、発行:アフリカキカク)だ。編集人である下窪さんの編集後記が、私の迷いを払拭してくれた。以下、一部抜粋。

<はっきり言うと、紙だろうが電子だろうが、どちらでもいい(つまり、どちらもやる)。本当に大切なものは、そんなことで変わりはしない。>

約10年前の下窪さんの言葉に、ポンと背中を押された気がした。

私の大切なことは「轟音のごとくGO ONする」。それを全うするのであれば、紙とかWebとかどうでもいい。私にとっては、紙もWebも単なる道具でしかないからだ。

そんなことを考えながら、私は次号の準備を進めていく。

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Creator

GO ON編集人 牧田幸恵

栃木県足利市在住。グラフィックデザイナー、タウン情報誌等の編集長を経て2020年12月にGO ONを立ち上げた。