Column

雑煮的雑記 その3

GO ON編集人

最低で最高な90年代ブーム再び

7月から異様な盛り上がりをみせる90年代ブーム。今月のFeatureも90年代がテーマ。そう、轟音は世間とマッチングしている。90年代の鬼畜カルチャーなんちゃらなどは他の方にお任せして、このブームを機に訪れた、何度目かの私的な90年代を追う旅がはじまった。

そんなわけで、ここ最近熱心にきいている音源を紹介しよう。
セルジュ・ゲンスブールの『メロディについて』が流れたら…「こんばんは、カヒミ・カリィです」でお馴染み、NHK FM『カヒミ・カリィのミュージックパイロット』。実家に帰ればラジオを録音し、さらにそれを元につくったMixテープが10本ぐらいあるが、それは後日自慢するとして、ネットに落ちていた95年4月のカヒミのラジオを元に、音楽を追いかける日々を過ごしている。

95年4月、カヒミのパワープッシュ曲はEL-MALO『Tambourine of Love』。ラヴ・タンバリンズのエリとデュエットしているクソ格好良い曲だ。カヒミがプッシュしているのであれば、ということで、しばらくEL-MALOのアルバム『The Worst Universal Jet Set』をオールリピートしている。小山田プロデュースだし、ジャケットのデザインはグラフィッカーズだし、コーネリアス『69/96』の前身みたいな雰囲気。ぜひ、きいて欲しい!!

そしてカヒミといえばセルジュ・ゲンスブールだが、みんなご存知だと思うので、ゲンスブールをすっ飛ばしてここではモーマスを。『Toothbrushed』の格好良さったら!!

その他、シトラスとかカプセルジャイアンツとかロケチリとかいっぱいいっぱいいっぱいあるんだけど、とにかく今回は、カヒミのラジオは私のカルチャーのベースになっている貴重な番組だということをみんなに伝えたい。そしてJK時代にこの番組をきいて音楽や映画を探しまくったキミたち、その熱量はまだ残っているかい?

「アニエス番長あらためA.P.C.番長のこの俺が!」
「私の夢はお金持ちになってフリッパーズ・ギターを無理やり再結成させることでーす」

2021夏、こんな岡崎漫画のセリフが脳内を駆け抜けるよ。

JKの私はBO

Rock that shit(『ROCK!ロック雑誌』スチャダラパー)精神にのっとり、今でも心のベスト10第1位(音楽雑誌部門)は『米国音楽』(BO)だ。7月から話題のQJやRJは立ち読みレベルの媒体であり、先のカヒミのラジオで知った『米国音楽』を超える音楽雑誌は無いと思っている。

『米国音楽』は私の住んでいるエリアの本屋には置いてなくて、はじめて見つけたのは我が青春CITYである栃木県宇都宮市ユニオン通りのレコ屋だ。MariMariが表紙のもので、お店の人が言うには「付録のCDに宇都宮のバンドが入っているから」という理由で仕入れたらしい。JKのお小遣いでは少々高めな雑誌だがCDが付いているからお得だ。そのCDには、かせきさいだぁ、カプセルジャイアンツ、エイプリルマーチなどが入っていた。当時なかなか買えなかったため(売ってないしお金がない)、95年冬号(MariMari表紙)と97年夏号(小山田表紙)しかリアルタイムで入手できなかった(その後、CDを残して母親に捨てられてしまった)。

四半世紀後の2021年夏、私は急に『米国音楽』を救出しなければならないという使命感に燃え、97年春号(カジくんとヒロスエ)、98年夏号(小山田マタドールからデビュー)、99年夏号(R.I.P. SINJI SATO)を救出した。

最近救出した『米国音楽』

現在読んでいるところだが、編集長の川崎さんのテキストって当時はあまり気にならなかったけど、自分えぐりガンガンな文章だな。特に99年夏号R.I.P. SINJI SATOの文章はまさにそれ。今年はフィッシュマンズの映画もやってるし、巡り巡って手元に届いた感じがして、二度と手放すものかと誓った。
※『beikoku』前の『米国音楽』を探しています。CD無くてもOKなので売ってください!!

『ゴロワーズを吸ったことがあるかい』ムッシュかまやつ

そんな『米国音楽』に夢中になっている私の目に留まったジンが2冊ある。『FOREVER DOCTOR HEAD’S WORLD TOWER』『march to the beat of a different drum』。この2冊には『米国音楽』の前身ミニコミ『英国音楽』の匂いが漂う。

『FOREVER〜』は「1991年『ヘッド博士の世界塔』発売日の30年後の7月10日発売」と書いてある通り、本物のパーフリストによるファンジンだ。リアルタイムにパーフリのライブへ行ってるし、ミニコミ『英国音楽』や私の知らないパーフリのファンジン『FAKE』のことまで記載されている。そして何よりも、30年経っても追いかけている姿勢が素晴らしいのだ。

『FOREVER DOCTOR HEAD’S WORLD TOWER』

『march〜』はタブロイド版のフリージン。CD(レコード)ジャケットを紙面に敷き詰め、対面ページに各々がコメントを記載するコーナーが好きで、並んでいるジャケットをみて「音楽の趣味が近いかも」と勝手に思っている。シトラス貸してください!

『march to the beat of a different drum』

この2冊のジンを読みながら「何かにこったり狂ったりした事があるかい」(『ゴロワーズを吸ったことがあるかい』ムッシュかまやつ)と頭の中でムッシュの歌声が鳴り響いた。私は節目節目でこの曲を思い出す。

最低なオリンピックイヤーに四半世紀前のことを辿っていたら、現在進行形のパーフリストの方たちに出会う。私はその方たちと「小山田のライブでムッシュと一緒に歌うゴロワーズがクソ格好良いですよね!」と盛り上がりたい。そしていつまでも、このパーフリストの方たちのように、何かにこったり狂ったりしながら生きていきたい。30代、20代の世代にもそういったフォロワーがどんどん増えて欲しいと願う。

このライブでムッシュと共演していたと思う(バックバンドはwack wack rhythm bandかな)。動画はみつからなかったけど、この小山田最高だからみてほしい!※これをきいた後、wack wack rhythm bandのカセットテープを買った!!

Creator

GO ON編集人 牧田幸恵

栃木県足利市在住。グラフィックデザイナー、タウン情報誌等の編集長を経て2020年12月にGO ONを立ち上げた。