Column

2021年、自分なりのダンスを続けて行きたい

3rd & Homie

2020年が終わる。
あっという間だったけど、1年前が遠い昔のように感じてしまう。
色々あったけど何もした気がしないし、実際何もしていない。

3rd & Homie的イベントとしては3月に東京のM.A.Z.E.とアメリカからWARM BODIESのツアー、4月には同じくアメリカからSHEER MAGの来日ツアーが行われているはずだった。
3月に入り世の中的にはちょうど新型コロナウイルスの感染が拡大していって、毎日変わっていく状況に翻弄されながらも来たる日に向けて祈るような気持ちで準備を進めていた。

M.A.Z.E.

WARM BODIES

SHEER MAG

左)M.A.Z.E./WARM BODIESツアーフライヤー
右)SHEER MAGツアーフライヤー

元々このツアーにはそれぞれにかっこいいフライヤーがあったのだけど、どうしても描いて欲しくて、自分が足利で1番パンク的な人だと思っている惣田紗希さんにお願いして、2つのイベントをまとめたフライヤーを描いてもらった。惣田さんは科は違うが高校の先輩でもある。
テーマは『風とダンスと抵抗』でお願いした。

『ダンス』と『抵抗』は2019年後半くらいから自分の中でちょくちょく出てくるキーワードのようなものだった。最初に意識したのは2019年10月26日に行われたサウンドデモ『渋谷プロテストレイヴ』だと思う。たまたま見たネットの記事に古い友人が路上で踊っている写真が掲載されていて興味を持ったのだが、その時掲げられていた『ダンスは抵抗である』というステートメントが衝撃だった。
音楽で思い思いに体を揺らしたり、自由に楽しむ。そのこと自体が抵抗になるのだ、と。
https://i-d.vice.com/jp/article/pkebzg/protest-rave

2020年に入り、すぐにみた映画『ジョジョ・ラビット』では置かれた状況にも負けずにオシャレをし、ダンスを踊る姿が美しく描かれていた。

1月末にリリースされたGEZANのアルバム『狂(KLUE)』がそれまでとは一変してBPM100縛りのダンスミュージックに寄せてきていてそれがしっかりと抵抗の音楽であったのも、今の状況を予知していたかのような歌詞も必然のような気がして、スッと自然に体に染み込んでいく感覚があった。

そういえばソウル・フラワー・ユニオンが最近リリースしたアルバムのリード曲も『ダンスは抵抗』であった。

『風』は惣田さんのイラストには綺麗な風を感じる印象があったので。
イメージでは強い風当りに対して物ともせず、緩やかにダンスでかわしてく様を想像していたが、惣田さんからあがってきたイラストには、強い風を受けて、それでももがきながらダンスを続ける女性の様子が描かれていた。3つのツアーバンドそれぞれの女性ヴォーカル達も、惣田さんも、強い風に対して当たり前にしっかり傷ついているし、誰もが抱えている弱さを当たり前に持っているんだということに気付かされ、勝手なイメージで決めつけていた自分の浅はかさを恥じた。
そしてそれでも怒りを表明しているんだ、ということの意味の大きさや気概を感じとれたし、同じ時期に惣田さんが寄稿していた記事『前向きでいられなくてもいい。弱さと怒りを表明する勇気を』の内容とも繋がった。
https://sheishere.jp/column/202005-sakisouda/

惣田紗希さんに依頼したフライヤー

結局来日は直前でアメリカからの渡航が困難な状況になりキャンセルになってしまい、フライヤーも幻になってしまった。まあでも完全に自己満の世界だけど、本当に依頼して良かったと思っている。
後日惣田さんから「コロナにより中止・延期になったイベントのフライヤーデザインを集める雑誌の企画に誘われた」との連絡があり、件のフライヤーを掲載して貰えることになった。
実際に白い紙に透明ニスで印刷された雑誌『アイデア』を手に取って、幻のような、けどしっかりそこに存在していたことが証明されたような気がして、救われたような気持ちに。
これで成仏できたと思う。
https://www.seibundo-shinkosha.net/magazine/art/49283/

2020年が終わる。
Save Our Spaceのこと、Black Lives Matter、Burger Recordsの閉鎖など触れたいことは山ほどあるけどこの辺で。
2021年、自分なりのダンスを続けて行きたいと思う。

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