Column

追憶の東京〜地図のような文章〜
番外編 1997/2021のエヴァンゲリオン(雑感)

サイトウナオミ

今回も番外編。
2つ本編があって2つ番外編となると、もはやどちらが本編でもよくなってきてしまうけれど、エヴァンゲリオンの話は今、記しておかなければならないので許してください。

5月11日火曜日の午前中、ようやく『シン・エヴァンゲリオン劇場版』を観てきた。『エヴァンゲリオン新劇場版』かと思っていたら、『シン・エヴァンゲリオン』だったのですね。今書いていて気付きました。映画の感想については、それぞれ色々と思うところがあるかと思いますので深くは語りませんが、テレビ版から観てきた僕としては、良かったとか悪かったとかいう前にとりあえず終わったということで、区切りがついたというような気がします。

記憶を整理するためにウィキペディアを調べてみると、『新世紀エヴァンゲリオン』がテレビで最初に放送されたのは、1995年〜1996年の夕方のようだ。その時は、その存在すら知らなかったと思う。高校時代に受験勉強をしながらエヴァンゲリオンのことを考えていた記憶はない。

僕がエヴァンゲリオンを知ったのは、1997年に上京した時に一緒に住んでいた兄の影響である。兄から面白いアニメがあると聞いたのか、深夜に再放送されたものをビデオに撮り小さいブラウン管のテレビで観ていたような記憶がある。夜中に観ていたような気がする。

そして、1997年の3月にエヴァンゲリオンの劇場版の第1弾が公開されている。そして夏には、劇場版の第2弾も公開している。そして、どちらも劇場で観たはずなのである。

たぶん新宿の大きめの映画館(今みたいなシネコンではない)へ観に行って、なんとも解決しないモヤモヤを抱えたまま山手線に乗って駒込に帰ってきたような記憶がある。テレビ版を観終わったあとに第1弾を観て、数日後に第2弾を観たのだろうか。そのあたりの記憶は定かではない。

とにかく1997年の夏に、僕はエヴァンゲリオンに「ハマった」(大げさな言い方をすれば「取り憑かれた」)。

たぶん、その頃にテレビ版を観て、映画も観に行った同年代の人たちは多かれ少なかれそういうことになったのだろうと思う。だから20年を越えても、また映画を観に行ってしまうのではないだろうか。当時、今ほどは「みんなが」観ているというようなものではなかったようにと思う。兄とはエヴァンゲリオンについて話しあったが、大学の文学部のクラスメートとエヴァンゲリオンについて話した記憶はない。

1997年当時は、インターネットはまだそれほど普及しておらず、モデムで電話回線につないで(ピーヒョロヒョロヒョロみたいな間抜けな音とともに)ようやくメールや誰かのちょっとしたホームページを見る程度だったと思う。

今のように、いろいろと調べたり誰かの感想なり見解なりをみることはなかったので、エヴァンゲリオンに関するモヤモヤを今のようにインターネットで調べて解決することはできなかった。その代わりに本屋に行けば、いわゆる謎解き本的な本はいろいろ出ていたし(「死海文書」の解説本やキルケゴールの『死に至る病』も売れていた)、大学の現代文化を扱うような授業では、オウムのことや酒鬼薔薇事件、援助交際などと同様にエヴァンゲリオンについても語られていたような気がする。

何がそこまで、その当時の我々をとらえたのか、そして今でもとらえ続けているのだろうか。

単純に考えると、「何だったのか気になる」ということだと思う。テレビ版で、最後まで明確な答えのなかったあれこれ。「使徒って結局なんなんだ?」とか。「そもそも何と戦っていたんだ?」とか。「エヴァンゲリオンって何なんだ?」とか。ある程度の説明はあったと思うが、今までの誰にでもわかる1つのストーリー(答え)があるようなわかりやすいマンガではなかった。

そして、はっきりとした答えがないエヴァンゲリオンは「気持ち悪かった」。かといって、「わけわかんねぇ!」と片づけるには、魅力的すぎた。きっと何かまだみえない深い「意味」があるに違いないと、答えを求めて、映画館に足を運んだり、謎解き本を立ち読みしたりしていた。

逃げちゃ駄目だ。逃げちゃ駄目だ。

テレビ版で解決されなかった答えは、2つの映画を観たところで結局何もみつけることはできなかった。より一層のモヤモヤを抱えることになる。

そんなモヤモヤを抱えたまま1997年は終わり、10年が経つ。2007年に新劇場版『序』、2009年に『破』、2012年に『Q』が公開される。『序』『破』はやはり新宿の大きな劇場で観たと思う。『破』のときは立ち見だった。『Q』も劇場で観ていたと思っていたけれど、先日テレビで放送されたものを観たら、観ていなかったことに気付いた。ということでテレビの録画で『Q』を観て、最後の映画を先日観終えたということである。

最初にエヴァンゲリオンを観た1997年から20年を越える月日が経った。とても長い。NHKで放送された庵野監督のドキュメンタリーも観た。それを観たら、今まで解決されない様々なモヤモヤしたものも、もうどうでもよくなってきた気がする。

いろいろなモヤモヤを抱えながら、結局は生きていくしかない。

Creator

サイトウナオミ

地図描き/ふやふや堂店主。群馬県桐生市出身。東京・京都を経て2012年秋より再び桐生市に住む。マップデザイン研究室として雑誌や書籍の地図のデザインをしながら、2014年末より「ちいさな本や ふやふや堂」をはじめる。桐生市本町1・2丁目周辺のまちづくりにも関わり始める。流れに身をまかせている。