今年ウェス・アンダーソンの新作映画『フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊』の公開が決定した!こんなにも新作が待ち遠しいのはいつ以来だろうか?きっと『マッドマックス 怒りのデス・ロード』以来のワクワク感だ!
ウェス・アンダーソンは大好きな映画監督の1人だ。そんな彼の映画はどれも面白いのだが、映画に登場する様々な時代のカルチャーを上手く表現することがとにかく天才的で、そのセンスにただただ圧倒される。
そこで映画に出てくるファッションや小物、胸がときめくようなデザインされた建物の内装など、ありとあらゆる分野に「こだわり」が詰まった、ウェス・アンダーソンの世界をみていこう。
最初に紹介したい映画は、12歳の少年少女の駆け落ちを描いた『ムーンライズ・キングダム』。この映画に出てくるスージーという女の子が、浜辺で音楽を流している青いレコードプレーヤーがとにかく可愛い。年式やメーカーなどは不明だがコロンビアGP-3に似ていていい感じだ。2人の幼い少年少女が浜辺でレコードを流して踊っているというシュチュエーションだけで最高!
そしてこのワンシーンをみてほしい。高台から双眼鏡を覗くスージーの姿は完璧だ。完璧な左右対称の画面にスージーのファッションと高台の色合い、そして海と青空。どれをとっても完璧すぎる演出だ。
映画は色使いや画面に映る奥行きのバランスによって、良い映画かそうではない映画になってしまうという僕の持論がある。ウェス・アンダーソンはその点において全て完璧な監督である。
次は、父の死をきっかけに絶交状態であった兄弟の結束を、旅をする事によって再び取り戻
すという映画『ダージリン急行』。そこに出てくるルイ・ヴィトンの鞄だ。デザインしたのはマーク・ジェイコブズ。この映画のためだけにデザインした特注品だ。ヴィトンに興味は無いが、この鞄やスーツケースなどは色合いもそうだが、とにかく形やデザインが可愛いすぎる!
あえてルイ・ヴィトンという世界で一番有名なブランドを使用し、みている側に対して「あれヴィトンのバッグ?」と一瞬現実世界に引き戻し、いや、映画の中もきっと現実なんだと再確認させる手法でみている側をまた映画の中に引きこんでしまう。
様々な現実にもある小物を散りばめて、フィクションと現実の境界線をあえて行ったり来たりさせる事でその物を引き立てるような、そういったアイディアや演出は多くのクリエイターに影響を与えているだろう。
『ライフ・アクアティック』もビル・マーレイが特注のアディダス・カントリーのシューズを履いてはしゃいでいる姿は、なんだかほっこりする。他にも、みんなの洋服や赤いニット帽など可愛い小物がたくさん出てくるので、チェックしてみるといい。映画に登場する潜水艦もイエローサブマリンみたいでクールで可愛いのだ!
お次はウェス・アンダーソンがつくり出す建物と内装の世界。
僕(神田)は木工業をしている。主に家具の製作を中心に建物の内装なども自分たちで手がけたりもしている。そんな中、製作に行き詰った時なんかはウェス・アンダーソンの映画をよくみる。彼のつくり出す世界観が好きなのだ。背景にぴったりと合ったアンティークの家具や、素敵な演出をする壁紙の色合いや素晴らしいテーブルや椅子の数々。
そういった点でよくみるのは『グランド・ブダペスト・ホテル』だ。シアーシャ・ローナン演じるアガサが住んでいるワンベッドルーム。天井の梁が剥き出しで、花柄のカーテン、そしてポツンと明かりを灯しているライトが非常に良い演出をしている。部屋はライトで様々な表情をみせてくれるので、ライトにはこだわった方が良い。
そして同じくアガサがお菓子をつくっている場面。汚れた漆喰の壁や、何10年と使ってきたであろう、いい感じに味が出てきたテーブル。そしてアガサを照らすテーブルライトも可愛い。またテーブルに置かれたカラフルなお菓子もこのワンシーンによって素晴らしい演出をしている。
映画は物語を楽しむだけではなく、登場人物のファッションや部屋の内装、飾ってあるものなどに焦点を当てるとまた違った楽しみ方がある。部屋の背景に飾ってあるポスターや、登場人物が着ているTシャツなど僕はよく注目してみている。映画の物語がクソつまらなくても、そこだけに焦点を当ててみると、また違った楽しみ方があるだろう。近年だと、A24配給の映画がそういった「細部」にまでこだわっているのでオススメだ(グッズも可愛いよ)。
そんなわけで『フレンチ・ディスパッチ』の公開まで間もなくだ。僕はまた「勉強」という意味も込めて、映画を楽しもうと思う。