Column

ヴェイパーウェイヴと
インターネット世代の音楽

BEDROOM RECORDS

ヴェイパーウェイヴとは

僕は昔から少しでも気になる事があれば、すぐに調べて答えを見つけて自分の知識として頭の中に保存していた。本をみたり映画をみたり、色んな物に対して答えを見つけていった訳だ。

今では便利な世の中になって、スマホひとつでなんでも調べられる。
素敵で簡単な世の中の反面、人の思考回路を鈍らせる悪夢の兵器のような物でもある。
それだからスマホばっかりイジってるやつは脳みそスカスカである(神田持論)。
たまには図書館に足を運んで調べものをするのも良いだろう。
このように人々は知識から成り立っている。
いろんなこと学んでいって進化する。

それは社会のみならず、映画や音楽、たくさんのカルチャーシーンでもそうだ。
日々、映画や音楽も「進化」しているのだ。

最初に触れたように、僕は疑問をもったらすぐに調べて知識にする。
だけど、未だに答えが出ないものもある。

それは昨今の音楽シーンを密かに盛り上げている「Vaporwave」(ヴェイパーウェイヴ)という新しい音楽ジャンルの事だ。
このヴェイパーウェイヴ、調べても調べてもよく分からない。いや調べれば調べるほど謎
が深まっていくのである。
僕は完全に沼にハマってしまった。
意味のわからない日本語。
意味のわからないサンプリング
意味のわからないジャケットアートワーク。

10年代のインターネットというひとつのテクノロジーがつくりだした、この怪しげでカルト的でヘンテコで狂気じみた音楽ジャンルを、僕なりの解釈もしつつ僕の小さな脳みそを使って辿ってみようと思う。

まず、ヴェイパーウェイヴとはなんぞや?と思っている方もいるでしょう。

ひとつヴェイパーウェイヴの定義として挙げられるのは、80年代のポップスやゲームのサントラ、店内BGMの音質やスピードを落とし、延々とループさせる音楽ジャンルとされている。

シティポップの文脈で話題になり、ダンスミュージックとして扱われている「Future Funk」もその派生ジャンルといわれている。支離滅裂な日本語や、90年代のローポリゴンCGなどを多用したデタラメながら強烈なアートワークなども特徴的だ。

また「サンプリング」という音楽手法を使って、ありとあらゆる「音」を使い分けて音楽をつくっていくこと。

サンプリングの元にあるのは日本の昭和に放送されていたCMや映画のサントラやゲーム音、コンビニに入った時のコンビニ独自の店内BGM、それ以外に日本のアニメーションや近未来的ディストピア、はたまたお笑い番組などのライヴ音源などがある。

この「何でもあり」状態のサンプリングを駆使してつくり出された真珠のメロディは、なんだか懐かしくどこかおかしくて、とてつもなく居心地が悪い。
そんな音楽がヴェイパーウェイヴだ。

また一貫してブレードランナーのような「近未来」というテーマもヴェイパーウェイヴでは欠かせない要素になってくる。
いわゆる80年代のレトロフューチャーリズム。
80年代初頭にたくさんの企業などが掲げた実現されなかった未来像。
「ノスタルジー」それがヴェイパーウェイブの根源にある。

日本のSFアニメなどもそうだ、AKIRAや攻殻機動隊、エヴァンゲリオンなど数を上げていくとキリがない。

日本のアニメ、セーラームーンをフューチャーしたMACROSS 82-99のファンクアルバム『セーラーウェイブ』。山下達郎やAKIRAなどもサンプリング(ジャケが可愛い)

ヴェイパーウェイヴの最重要作品

まず、ヴェイパーウェイヴというジャンルを知ってもらうのに、必要不可欠なアルバムが2枚ある。

左)Macintosh Plus『フローラルの専門店』 右)Chuck Person『Chuck Person’s Eccojams Vol.1』

これらは10年代初頭に突如YouTube上にアップされ、瞬く間にコアな音楽層に衝撃を与え、ヴェイパーウェイヴという新たな音楽ジャンルが誕生した歴史的な2枚でもある。

この作品をきっかけにたくさんのアーティストが膨大な数のヴェイパーウェイヴの作品をネット上にアップしており、プロアマ問わず著作権ガン無視な作風はすぐに削除されたり、違法アップロードされたりで、かなり問題視もされていた。

だがそのギリギリな所も魅力的である。それを裏付ける理由として上記のMacintosh Plusの『フローラルの専門店』をどこかの誰かが違法ダウロードし、カセットテープで販売したところ、瞬く間に完売してしまい一時期はネットオークションで○万円で取り引きされたほどでもある。

それほど危険で魅力的なヴェイパーウェイヴ。聴けば聴くほど沼にハマり、気がつけば中毒になっているほど病みつきになってしまう。

またほとんどの作品がYouTubeやSoundCloudで聴くことができるのも魅力のひとつ。中にはヴェイパーウェイヴ専門レーベルも誕生し、George Clantonが自身のレーベル『100%electronica』を立ち上げ、カセットテープの再発やヴェイパーウェイヴ選りすぐりのアーティストから、アナログ盤のリリースなども手掛けている。自身のサイドプロジェクト『ESPRIT空想』も最高!

チルウェイヴとヴェイパーウェイヴの関係性

同じく10年代に誕生し、今なおインディシーンの中心にあるChill Wave(チルウェイヴ)。ヴェイパーウェイヴの歴史を辿っていくとその発生には必ずチルウェイヴが関係していた。つまりチルウェイブがヴェイパーウェイヴの元祖的位置づけになる。

たくさんのアーティストのインタビュー記事などを読んでいくと、ある1曲をきっかけにヴェイパーウェイヴが誕生するきっかけになったのではないかと言われている。

Washed Out『Feel It All Around』

09年にリリースされたWashed Outの『Feel It All Around』はチルウェイヴの元祖ともいえる1曲で、ここからチルウェイヴという新たなインディシーンを築き上げた最重要作品のひとつだ。

またこの1曲をきっかけにヴェイパーウェイヴが生まれたのではないかとも言われている(諸説あり)。哀愁漂うレトロシンセ、ちょっぴりシューゲなドリーミーサウンドと気だるくローファイなヴォーカルは確かにヴェイパーウェイヴに似ている。
このようにヴェイパーウェイヴにはまだ謎がたくさんあるわけだ。
だが近年ヴェイパーウェイヴをつくった人物が判明したという情報が入ってきたのだ。

上記に挙げたファーストウェイヴといわれた最重要作品2枚、Macintosh PlusはVektroidという女性アーティストで素性は全く明かされておらず、謎のベールに包まれたアーティストでもある。それよりも先につくられ10年代初頭に公開された作品『Chuck Person’s Eccojams Vol. 1』を制作したのはあのアーティストだった。
それは誰なのか?それはOPNことOneohtrix Point Neverだったのだ。
Chuck PersonはまだOPNが売れる前の別名義で80年代の音源を変則させながらサンプリングしまくってネット上に大量にアップしていたのである。

これをきいてMacintosh Plusや他のアーティストたちが同じ手法でつくったものとされ、そこから「Vaporwave」なるものが誕生したといわれるようになった。つまりOPNことDaniel Lopatinがヴェイパーウェイヴというものを生み出したのではないだろうか。

本人もインタビューなどでこのことは一切語っておらず、謎のままだ。
まるで何も話したくないように・・・。

全ては仮説に過ぎないが、元を辿っていけばいつか必ず僕なりの答えが見つかるはずだ。
足利発ヴェイパーウェイヴ研究家(自称)として日夜歴史を辿っていこうと思う。

Creator

BEDROOM RECORDS

90年代生まれの幼なじみ2人が音楽、映画、アートなどの様々なカルチャーをマニアックな視点で掘り下げて発信していくプロジェクト。 栃木県足利市名草町にて2020年BEDROOM RECORDSをオープン。 厳選されたレコード、CD、VHS、様々なアーティストの作品などを展示・販売。 オリジナルグッズも展開中(現在不定期営業中)。