Column

追憶の東京〜地図のような文章〜
番外編 地図的な夢の話

サイトウナオミ

今回は番外編ということで夢の話を。

夢にとても興味がある。そして、他人と比較したことはないからわからないけれど、よく夢を見る方だと思う。目が覚めたときには夢の内容をよく覚えている気がするのだけれど、時間が経つにつれて、おぼろげになってくるものがほとんどだ。だが、おぼろげになったものをおぼろげな記憶として、今でも覚えているということもある。不思議だ。

僕の見る夢にはいくつかのパターンがある。
1つ目のパターンは何かから逃げる夢。だいたいうまく走れないことが多く、途中で夢ということに気付いて目が覚める。2つ目のパターンはバイトなどに遅刻をする夢。バイト前に昼寝をしていたりすると見ることが多かった。バイトの時間になっているのに、なぜかかなり遠くにいる(例えば群馬県桐生市)。そして電話をかけようとするのだが、きまってうまく番号をまわせない(なぜかダイアル式の電話)。

遅刻する夢ではないのだが、最近、大学の卒論の提出に間に合わない夢を見た。提出日なのに、ただの1ページも書いていないという夢だった。きっと、この原稿の〆切が迫っていたのが原因だと考えられる。

そして3つ目のパターンは、地図的な夢。地図的な夢といっても、地図が出てくるわけではなく、移動をする夢で、その移動をあとから地図のように思い出せる夢である。地名と位置関係(東西南北)は現実と同じなのだが、それぞれの町の様子は全然違う。あるときは京都、あるときは東京、あるときは船で東京から大阪に移動したり、あるときは電車で東京を移動したりする夢である。

そんな、地図的な夢の話をひとつ。

どこか東京の町を連れ合いと歩いている。そこの町は、おそらく東京の山手線の外側で、池袋などから数駅離れているような練馬区とか板橋区とかにありそうな町だ(あくまで架空の町)。いわゆる下町のように古くはなくて、それでいてビルが建ち並ぶような場所ではない、ほどよく古くてほどよく新しい商店街を歩いている。

その商店街には、揚物を売っているような肉屋があったり、ちょっとした本屋や100円ショップなどもあって、日常生活を送る上では不自由なく暮らせる。この商店街がとても気に入って、この町に住むことにする。「なんで桐生市に家があるのに、ここに住むことになったのだろう」と、ふと現実世界とつながるのだが、夢の中なので、そんな疑問はすぐに消えていく。とにかく、この町に住むことになった。

商店街がある通りと、V字に接するようにもう1本の通りがある。そっちの通りはあまり魅力的ではないようで、よく覚えていない。そしてV字の接点のところに、大通りが通っていて、その地下には地下鉄が走っている。その地下鉄は、まだ全線開通していなくて正式な名称がついていない。仮に13号線と呼ばれている(現実の話、大江戸線は開通前12号線、副都心線は13号線という名前だった。それはそれで僕は好きだった)。

その住むことにした町の駅から地下鉄13号線に乗って、2つか3つ先の駅に事務所をかまえようとする(なんで家のある町で事務所をかまえないのか今となってはとても不思議なのだが、あくまでも夢の話である)。物件を探しに地下鉄に乗って移動する。

そのときは昼間の時間で、地下鉄の車内は比較的空いているのだが、満員電車には乗りたくないから、通勤の時間帯は混まないのだろうかと心配になる。目的の駅に着いて地下街(地下通路)を歩く。まだできたばかりなのか、まったく何もない地下街である。売店も自動販売機も、まったく何もない。つきあたりに、ものすごく細い扉があって、やっとのことで入ってみると何か特殊な博物館か美術館のような不思議な場所であった。

地下街から地上にあがってみる。地上の町も、ただビルが建っているだけの恐ろしく何もないオフィス街であった。まだできたばかりの町なのかもしれない。なぜか1軒だけ美味しそうな定食屋がある。それを見て少し安心する(とりあえず昼ご飯は食べられる)。ここで事務所になる物件を探そうと思う。というところで目が覚める。

なんとも無意味で色彩のない夢だったのだが、商店街ともう1本の道、大通り、地下鉄、地下街、別の町などとても地図的な夢だった。面白い夢ではなかったけど、商店街の様子や閑散とした町の様子をおぼろげに、そして鮮明に記憶している。

Creator

サイトウナオミ

地図描き/ふやふや堂店主。群馬県桐生市出身。東京・京都を経て2012年秋より再び桐生市に住む。マップデザイン研究室として雑誌や書籍の地図のデザインをしながら、2014年末より「ちいさな本や ふやふや堂」をはじめる。桐生市本町1・2丁目周辺のまちづくりにも関わり始める。流れに身をまかせている。