Column

私的夏日記・2022

PEANUTS BAKERY laboratory

8月1日(月)
今日から1ヶ月、夏の間、久々に日記をつけてみようと思う。

2日(火)
午前病院。薬の種類が増えすぎて把握できなくなってきた。恐ろしい数。アメリカで偏頭痛を治療する為の肌に貼る機械が出来たらしい。早く使ってみたい。

4日(木)
朝、車の契約。途中で頭がガンガン痛みだす。家に帰るとパンは過発酵。薬を飲み横になるしかない午後。
夜、多少頭痛が残り不安の中、初ヨガへ。求めていたものが全てあった。90分の間に頭痛の芯が少しずつ小さく消えていくのを感じながら、途中涙腺が震えたかもしれない。

5日(金)
いつ振りか分からないくらいの、深く幸せな眠りの時間を得て目が覚める。陽の光をたっぷり浴び海で泳ぎ疲れて帰ってきて、シャワーを浴びて扇風機の前でスイカを食べて寝落ちして、それだけで毎日過ぎていってオッケーだったあの頃のような幸福感。
朝、ブルーベリーとクリームチーズのケーキを焼く。ブルーベリーの味って繊細で持ち味をどう表したらよいかまだ分からない。

6日(土)
今の職場は野菜が身近なので、自然と野菜を食べる頻度が増えた。前はちょっと元気をつけたい時に豚肉をよく買っていたけれど、今は野菜が1番気持ちを満たしてくれている気がする。野菜ばかり食べていたら野菜の味や食感、個々の持ち味がはっきり分かるようになってきた。

7日(日)
夜に今朝の『安住紳一郎の日曜天国』(ラジオ)をタイムフリーで聴きながらご飯を食べる楽しみ。

8日(月)
ネガティブな気持ちは走って解消するべし。久々に仕事終わりのランニング。

9日(火)
夕方ランニングしに出かけるも夜頭痛。今月の頓服が無くなりそう。

10日(水)
久々にパンが焼けた。トマト酵母は青臭さがある気がする。今月たくさん失敗してしまったので、もう少しトマト酵母でいろいろ焼いてみたい。
お財布が壊れたので探しにいく。ついでに靴も修理に出しにいく。
夜、『カフェあつめ木』で夕食。
頭が毎日痛くて何も考え事が捗らない。

11日(木)
頭痛の周期は過ぎ去ったかもしれない。
お盆の花、落花生、仏壇用の羊羹などを買い、夜は実家で食事。祖父母を好きだったわけじゃない。嫌な思い出の方が多いけれど、切り離してしまえるほどの強い気持ちもない。過ぎたことを思い返すこともない。全て胸にしまって常に明るい方を向いて生きたいもの。帰り道の満月が見事で、神々しくてビリビリしてた。

12日(金)
職場に帰省で帰って来ていたYちゃんが、家族で顔を出してくれた。25〜6年振りだが当時の印象のまま。当時の仲間内では、私だけ音信不通でずいぶん心配をかけてしまったそう。当時は家庭の問題に頭がいっぱいで学生らしい思い出はひとかけらもない。中、高6年間の年表は空白で、友達といながらもいつも心あらずだったように思う。それなのにこうして今日、また会いに来てくれたことを本当に私は感謝しなくてはいけない。
今ならちゃんと向き合える気がする。覚えていてくれてありがたい。

13日(土)
台風の休日。土曜日といえば夕方のbayfmの小泉孝太郎から小林克也のラジオ番組を聴く。昨年あたりから小林克也さんの番組を意図せず耳にし始めて、いつの間にか虜になって番組を追いかけるように聴いている。ほんとに81歳? 

14日(日)
仕事帰りに走って気持ちが立ち直る。秋の気配がした。

15日(月)
20年近く1人暮らしを存分に楽しんでいる。悩んだり落ち込むことも一時的にあるけれど、おおむね眠れば回復する。経験上、唯一体調が寝込むほど悪くなる時、どうしようもなく心もとない気持ちになる。やりたいことがたくさんあるから毎日楽しく生きられるのに、それが出来なくなる絶望感と不安。肉体が弱ると精神がそっちに引っぱられるから、揺るがない身体の健康がまず大事と毎日思う。

16日(火)
Mさんに庭で採れたブルーベリーをたくさん頂く。こういうことが何より嬉しい。一緒にいない時にも、その人の中にふと自分のことを思い浮かべてくれている、ということが。

18日(木)
車の代金とヨガの申し込みの代金を支払う。これから毎月2つの維持費や会費が出費に加わる事になる。ちゃんと働き、今までより気を配ってお金を大切に。
ヨガの帰り道、前回もそうだったけれど両目の縁全体がじんわり濡れている。夜風は秋の気配。

19日(金)
からっとした秋のような澄んだ晴れ。昨夜少し無理したのか腰が痛む。
桃酵母食パン、やっぱりうまくいかず昼過ぎからもう一度仕込む。捏ねあげの具合はよかったと思う。焼き上がりは明日出勤ぎりぎり間に合うかどうか。
昨夜はスマートフォンの電源を落として寝たら、いいパンを焼く夢をみた。

20日(土)
週1パン渡し日。出勤前ぎりぎりに焼き上げる。
お昼にスライスしてきた1枚を食べるけれど、これ、おいしいのかわからない。商品にしてよかったのか。夕食後も食べてみるけれど気が気じゃない。やっぱり没にするべきだった。ミキシングが全然足りないのかも。一体何やってんだよ、という気持ち。

21日(日)
昨日の食パンの事が気になりモヤモヤしたまま目が覚める。焼き直そう。とりあえず酵母を起こさなくては。帰宅後、梨の酵母仕込み。

22日(月)
11日以降、薬を飲んでいない。頭痛も起きていない。秋のような気持ちの良い朝。
M君、今日は「事業計画書、書いてみませんか?で僕のと擦り合わせて」なんて言ってる。一体一緒に何をするつもりか。若くて勢いがある。
ランニング。夜中頭痛。

23日(火)
頓服がないとやっぱり不安で病院へ。今日も薬の量が減るどころか増えてしまった。この10日間は予防薬も勝手に断薬していたので、久々に頓服を飲んだら身体が怠くて眠くて仕方ない。どんなに無添加だったり有機だったりの食材を食べたって、今日処方されてる薬8種類を飲んで、それってどうなんだろうか。
ビション・オ・シトロン用のレモンカードを炊く。

24日(水)
午後からひどい雷雨。

25日(木)
待ちに待った納車日。父を横に乗せて少し練習。お昼、お礼に焼肉をご馳走しようとしたが、閉まってたり混んでたりで結局ビッグボーイへ。
夕方からパイ生地を仕込み始め、夜中まで折り込み。

26日(金)
まだまだ緊張する帰り道。 

27日(土)
車で聴く音楽の音響の良さに驚く。車の運転は、人生の楽しみのかなり上位にランクインしていた昔のこと思い出した。早くドライブに出かけたい。
ビション・オ・シトロンは好評だった。
暑く、頭痛。

28日(日)
明日の「ヌン活」の予習。ケーキスタンドは下から順に。サンドイッチは小さい場合は左手で、など。村上春樹関連の本屋にも行くので読んでおこうと思いつつ、絲山秋子を3冊読んでしまう。桃酵母のパンを焼くが今ひとつ。

29日(月)
気持ちのよい気候、1年中今日でよい。朝またパンを仕込んでみる。

村上春樹を迷いなく神と言い切るIちゃんが気になっていた、村上主義者が集う会を定期的に催している駒沢の本屋の下見へ同行。古書店が久々で私も夢中になる。武田百合子の『言葉の食卓』とブリア=サヴァランの『美味礼賛』を買うか迷ったが購入せず。滞在1時間を超え何か買わないと、と新刊の『アインシュタインの旅行日記』を購入していたIちゃん。

その後虎ノ門の高層ホテルでアフタヌーンティー。桃って活かすの難しい。感じたことは結局マスカルポーネなどのくせの少ないミルキーなものと、白いふかふかのパンでサンドイッチにして食べたりするのが1番合う気がする。肉や魚介の前で吹き飛ぶ繊細な味と香り。

30日(火)
昨日撮ってくれた自分の写る写真全て、糸がほどけたようなめちゃくちゃに楽しそうな顔をしてた。何より。

誕生日プレゼントにもらった、有名パティスリーのブルーベリージャムと自作のブルーベリージャムをフィセルの半分ずつに塗って朝食べ比べてみる。いただきものの方、口に入れた瞬間違和感な風味。材料は同じ。増粘剤の表記はペクチンのこと?夜もバターナイフですくって舐めてみるが原因は分からず。

31日(水)
桃酵母でフォカッチャの練習。上手くいかなければ明日はイーストで作る。仕事前にランニング、帰宅後ぶどうとローズマリーのフォカッチャを焼く。明日はイースト。三日月が輝いてる。

8月最終日に焼いたフォカッチャ。ピオーネを焼いた部分が異常に美味しい

<日記後記>
前月のコラムは夏に向かって興奮高まる様子だったが、いざ夏の盛りの8月を文字に起こしてみたら月の前半は常に頭痛の不安がつきまとい、ランニングは暑すぎてほぼ諦め、カフェからの菓子の注文は来ず、パンは思ったようにおいしく焼けないままで盛り上がりはなく夏が終わった。けれども、また調子よく新しい季節の到来に心が躍るような気持ちでいる。

Creator

PEANUTS BAKERY laboratory 長谷川渚

1980年生まれ、神奈川県秦野市存住。パンを焼き、菓子をつくり、走る人。開業準備中。屋号は幼少期から常に傍らに居続けるSNOOPYのコミックのタイトル、及び秦野市を代表する名産物である落花生から。「laboratory=研究室」というと大袈裟な聞こえ方だけれど、かちっと決めてしまいたくない、常により良さを求めて試行錯誤する場所、自分でありたいという思いを込めて。