Column

豊田橋の下大盆踊り
蔵王遊睦民祭リポート

佐藤一花

反逆者なのか、菩薩なのか、道を示すにはどちらでもいいが、橋の下音楽祭には導きを感じる。去年に引き続き、橋の下音楽祭大盆踊り~初となる移動を果たした蔵王遊睦民祭へ参加してきた。

自分でも馬鹿だと思ふが、ひとり高速運転は精々3時間位しかできなかったが、とうとう休憩いれて片道6時間弱を運転した。

そうしてもどうしても、行きたい場所だ。

去年初めて行き、衝撃から脳みそが1カ月位バグって、これは上手くコラムなんて書ける状況ではない程だった。今回も自由に生きたいと芯から思ふ中2疾病にかかり、アッパー系リーガルに血が湧いた。

今年は橋の下大盆踊りと銘打って、8/25~27に開催された。橋の下大盆踊りでは、
<8/25>
○たまの知久寿焼
夜豊田へ着いてホテルへ行き、手羽先食べて橋の下へ到着したら大分良い時間。絵師長屋にぎっしり人が座っている。長屋に集まるは妖精達なのか?友人の店を出て、皆で聴いた温かい歌達は最高だった。しかも非公式。

<8/26>
○柳家睦&ラットボーンズ
この午前中からですね、オイ日雇い!聞いてんのか!って怒る愛のある睦氏。兎に角お洒落で、ダッチワイフの明菜と今日子がダイブする女子供にやさしい橋の下らしさを一気にあげてくれるバンド。ラジオ体操する様に踊れる、尻で割りばしも割る!そして、良い歌が多い。
○Monaural mini plug
橋の下でひそかと云うか中毒性ナンバーワン集団。タイのピンと云う楽器とドデカスピーカーから繰り出す、皆で練り歩く、音は大きい方がカッコいいを体現できるバンド。ぬ組の男勢がサウンドシステムを引き回し、どう云ったメンバー構成なのか毎度謎が謎を呼んでる。
○TURTLE ISLAND
主催共催後援どころではない、皆から愛される永山愛樹氏バンド。盛り上がりが違う、愛のある壮大なスケールとカッコいい音達が轟く。どうしたらこの祭りを始めたのか、いつか聞いてみたい。毎度モッシュやダイブする人の数が圧倒的ハーコーさ。
○南部式
西方のど田舎祭り以来、三味線ドラムから繰り出す爆音と爆竹にも負けない曲達、天候が急変し、落雷豪雨の橋の下で、狂乱の盛り上がり。噺家の様な小噺もはさみ、まじ面白かった。民謡の現代版の様な流れで堪らない。だが、しっぽりなんかしていなく、こんな激しいバンドだったか~と改めて感動。

<8/27>
○珍盤亭娯楽師匠

会場でだべってたら、サブちゃんの祭りが爆音で始まり、再度絵師長屋へ。超盛り上がってるのに誰だか分からず、マツケンサンバで踊り狂ってたら、ねじりハチマキにお捻り刺さった師匠が出て来た!会場が笑顔で異様な盛り上がりの凄DJ。流石っす。非公式で有りながら、この急遽始まっちゃった感が本当に大好きな橋の下である。
○切腹ピストルズ
橋の下の切腹は、何処で見る切腹とも大きい違いがある。土ぼこりが空に上がり、今回太鼓一つの音で客が早く始まれと言わんばかりに大絶叫していた。橋の下にくる着火の速い客、それに負けない音圧で挑む喧嘩の様なライブはモッシュから何から3日目の修行の様になっていた疲労もどっかにすっ飛んでった。
○亀島楽隊
橋の下に関わる皆で櫓に上がり、太鼓に鐘とフィナーレを迎えるに相応しい晴々した音。正に祭りの盛り上がりで、最後皆が踊り狂える。最後白い衣装で永山愛樹氏達が歌うのは、見るべき場面だった。

ハタマタ初となる遊牧移動を果たした蔵王遊睦民祭が9/22〜24の日程で開催された。切腹ピストルズ、TURTLE ISLAND、Monaural mini plugも大盛り上がり。
<9/23>
○GEZAN

言わずもがな、大人気バンドで説明不要。信者も多かろう、私も大好きだ。去年の橋の下最前で半裸のおじさんが降ってきてあざだらけになった為、後方で鑑賞。蔵王温泉に仕上がりを魅せたマヒトは、終始上機嫌でライブ以外も全日程3日間楽しんでいた。

<9/24>
○THA BLUE HERB

学生の頃から、HIPでHOPな人が熱狂していたが、うっすらしか予備知識なく参戦した大御所。こちらも非常に信者が多かろう、マイク1本で押し寄せる言葉達が鋭く時に優しく、完全ガツンと頭ぶっ叩かれてた。日本人のラッパー達の巧みさには感心するが、Bossは自分達に希望もくれるのだろう。

と云う訳で、見たライブはその他にも各国の黒獅子舞や民謡、郡上おどりなど世界各国の音や盆踊り、その土地にまつわる祭に関わるものが沢山行われる。世のパリピ達が、祭りに勤しむ世の中になってきている様に思ふ。

散々ライブレポをしたが、個人的にバク上がりなのは、絵師長屋と称して、レジェンド達がボムっている。それを傍でじっくり鑑賞できる。グラフィティに置き換えれば、普段だったら殺されかねない現場がゆっくりと眺められる訳だ。CASPER氏の作品やフォントは会場の至る処で見ることが出来るが、メインステージの看板のフォントに至っては、30分余りで書いてしまうそうだ(ご本人談)。それを聞いた時、白眼剥いて弟子入りしたい気持ちになった。相当な注文数のフォントを真剣に書く師匠の背中、レジェンドでしかない。私も絵師長屋にて、絵を描きたいわと云う夢も出来たわ。そして、終始其々の出演者達が云うのは、「自分達の居場所は自分で作る」と云う事。

正に大工たちがきっちり作る小さい街が数日だけ出現し、まっさらと消えてゆく規模の祭りが橋の下。其々の個が有るのは百も承知、だけど境界もなく、懐深い受け入れの場所が出現する。数年前までは無料だったなんて考えられない、皆が楽しめるようにと云う心意気も頭が下がる。自分が日々迷い狂って導きを好てる訳でもないが、誰もが深い温かな恩恵を受けられる場所の様に思ふ。昔の良い感じ村社会の様な。

個を持ちつつも、今と云う瞬間が正しいのかも何だか分からない時間が多い中、それでも良いから自分の良い居場所を作って行く。それは皆が体験してこそだし、誰かを裏で馬鹿にする事も拒絶する事もなく、共存すること。正しいを求めない、様々な感覚をすくい漏れない居場所かと、橋の下で感じた。

現場では、色んな人との出会いと恐ろしくも引き寄せるご縁に恵まれ、爆笑の連続。革命家になれなくても、泥の中でしか生きれなくても良いんだと言っていた永山愛樹氏の言葉が胸に残り離れない。

佐藤一花

Creator

佐藤一花

1979年群馬県生まれ。文化服装学院卒業後、アパレル生産管理、販売などを経て、現在のオフィスアートレディ活動に至る。イラスト・コラージュ・立体作品を制作。群馬、東京、埼玉など全国各処で展示を開催。