昨年の冬、栃木県足利市名草にレコード屋ができたという情報をSNSで見つけて、道に迷いながらようやく「BEDROOM RECORDS」に辿り着いた。何度か足を運び、レコードやオススメのCD、オリジナルMIXテープを買ったりした。私にとっては憧れの場所であり憧れの2人で、まさに「君になりたい(渋谷直角)」の気分だった。そして勝手に「足利のシティボーイ」と呼んでいた。
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レコード屋やろうぜ!
「BEDROOM RECORDS」は2020年1月にオープンしたショップだが、すでにその2年前から「BEDROOM CITY」という名前で、イベントの開催やオリジナルグッズをつくるプロジェクトをスタートしていた。
「カッコつけたくて、自分たちにブランド名をつけていた」と笑う。
「こういうの欲しいね!じゃあ、つくっちゃおう!」といったノリで活動していて、それが今の「BEDROOM RECORDS」の原型となった。
神田さんは映画のZINEをつくってみんなに配っていたというから、当媒体「GO ON」の走りのような印象も受けた。
さらに遡ると、なんと2人は4歳から一緒にいる。一度は離れたものの、中学校で再会しそこから現在に至る。
「みるものやゲームなど好きなものが一緒だった。1日中、2人で映画館へ行って映画をみていた。スターウォーズとか、B級映画も好き。スターウォーズみてマックで飯食って。その頃と今は何も変わらない」と2人は話す。
現在のショップは2年前に神田さんが見つけてきた。
「お店をやりたいけど、街なかより近所におじいちゃん、おばあちゃんが住んでいるような田舎の方がいいな」と思っていて、ここ名草の物件に決めたという。
そしていきなり大川さんへ「物件借りたからレコード屋やろうぜ!」と誘った。
当時、大川さんは大失恋をしていてすごく落ち込んでいた。神田さんが遊びに誘っても全然ダメで、そんな大川さんの意識を違う方向へ導かせたきっかけが「物件借りたからレコード屋やろうぜ!」だった。
友情。男の友情だ。そんなエピソードを聞き、さらに「君になりたい(渋谷直角)」の気分になってしまった。
「オープン当時は、タイの音楽がおもしろいと思っていた。タイ・ファンク(Khruangbinなど)とか。個性を出したかったし、タイへ行って買い付けしようと思っていたけど、コロナで行けなくなってしまった」。
いつか聞いたことのない音楽を探してきて、ショップに置いて欲しいと願うばかりである。
まるで2人の部屋のような「BEDROOM RECORDS」
2人にとって、目指しているショップや人物はいるのか尋ねた。
大川「店でいうと中目黒にあるwaltz(ワルツ)。流行る前からカセットテープを販売しているし、店内もカッコ良い。当時『時代遅れ』だと思われていたカルチャーにスポットを当てたところも」
2人「あとBRAIN DEAD(ブレインデッド)」
ロサンゼルス発のBRAIN DEAD(ブレインデッド)は、2人がBEDROOMを始めるきっかけになったアパレルブランドだ。
大川「人が普段みないところにスポットを当てている。アパレルだけでなく、家具や雑貨もあって、時代に合っているけど万人好みではないところがカッコ良い」
神田「やり方がカッコ良い。1番影響を受けているかも」
神田「いつもカッコ良いなと思う人へ、インスタとかでコンタクトをとる。大体無視されるけど(笑)。まずは行動だよね」
ショップに入ってすぐ目に飛び込むイラストの数々は、イラストレーターのMOFIN(モーフィン)の作品だ。この作品がみたくて遠方から来店する人もいるという。
彼にも2人の熱意が伝わって販売の許可をもらったと話す。
2人「足利市在住の絵を描いているワカツキさん(ショップに展示してある)やTシャツのデザインをしてくれたAND NYCのケンケンさんもカッコ良い」
2人「あと雑誌(リラックス、ポパイ、ブルータスなど)に出ている一般の人に憧れるかなぁ。同じ感性持っているなとか、新しい発見もあるし、たまに悔しいって嫉妬したり(笑)」
今後も2人の胸に刺さったアーティストの展示は、続けていきたいと話す。
流行に関わらず、自分たちの好きなものを「買ってもらう」ではなく「みてもらいたい」という思いが強い2人。
「ちょっと話を聞いてよ!買わなくてもいいからさ。俺たちの部屋をみてって感じだよね」と2人して笑う。
近所のおじいちゃん、おばあちゃん、そして遠方から来た若者など、様々な人たちが2人と話をしている様子が目に浮かぶ。ここは流行や年齢関係なくカルチャーを楽しめる場所なのだ。
俺らはディグるのが好き
神田「海外のちょっとエッチなB級ホラー映画にハマってた時があるんですけど(笑)、今はエロ動画とかですぐにみられるじゃないですか。昔は捨ててあったエロ本とか、兄貴の部屋に勝手に忍びこんでこっそり見てたりしてたけど。やっぱり簡単に手に入るものより、手間をかけて手に入れたいというか。音楽もそうですよね」
意外にもエロ話から真面目な話になった。
神田「サブスクは便利だけど、自分の中に入ってこない。買ったものは自分の中に入ってくるよね。映画もレンタルか、映画館へ行く。映画館でみて、つまらなかったらずっと2人で監督の悪口を言ったりして(笑)。そういうのが楽しい」
大川「何かを自分の足を使ってみつける。効率は悪いけど、わざわざ行く。みつからない時もあるけど、やっぱり俺らはディグるのが好き。便利な世の中もいいけど、アナログに戻った方がおもしろいと思う。あと、同じテンションの奴がいるからディグり続けられるというのもある。分かち合える人がいないと糸が切れてしまうから」
実はこの2人、何でも一緒かと思いきや異なる趣味もあるという。
神田「5歳からずっと週刊少年ジャンプを買ってるんですよ。もうライフスタイルの一部。俺、ジャンプ買わなくなったらつまらない大人になってしまう。ジャンプも買えないような大人になってしまったのかって。ジャンプ読まなくても買い続けます」
大川「僕は釣り、クルマ、バイクかな。『リバー・ランズ・スルー・イット』って釣りの映画があるんですけど、いいですよ」
ジャンプと釣りは、2人にとってずっと続けていきたいこと。
でもお互いの交わらない趣味だと話す。
最後に2人にとっての理想の生き方を尋ねた。
神田「30になったんだけど『いい歳こいて』なんて言われたくない。言いたくもないし。年齢問わず、ずっと好きなものを追求していきたい。60歳になってもジャンプを買う大人でいたい」
大川「流行とか関係なく、ずっと続けていくことが大事。焦点が当たってない時からずっとやり続けてきて、フィーチャーされたらファッション的になるみたいな」
好きなことを好きなだけやる、それがBEDROOMスタイルだ。
4月には渋谷でのサウナイベントに参加する。長らくショップは休業中だったが、そこから再スタートする(詳しくは「BEDROOM RECORDS」のInstagramをチェック)。
自分たちの欲しいものを勝手につくって、カッコつけてブランドに。
「カッコつけて」って素直に話す姿がカッコ良かった。
新しいMIXテープはもちろん予約済みだ!
え、カセットデッキがない?
カセットデッキがなくたって「カッコつけて」買うんだよ!
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