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ラーメン、餃子、ビール、タバコ
「タバコ吸いたいって思わない?」と急に友人に言われた。
「この間一緒に中華(町中華)食べた後、何かが足りないなって。タバコだった」と。
確かに町中華でラーメン、餃子、ときたらビールとタバコ。
ここまでが食事の一環である。
昔、ギャルと親しくしていた頃があった。
一緒に夜通し遊んでいたら具合が悪くなり、そのギャルが私の部屋(1人暮らし)に来て熱心に看病をしてくれた。そして次の日に私の両親が駆けつけてきて、ギャルに「一緒にラーメン屋でもいかないかい?」と誘った。
するとギャルが私に小声でこう言った。
「ラーメン屋行ったらさ、ラーメン、餃子、でビールいっちゃうよ。そしてタバコ。私のイメージダウンになるから行けない」。
冒頭の友人の話を聞いて、そのギャルを思い出した。
そして、タバコを吸いたいと言う友人にこう答えた。
「医者に余命宣告されたら、死ぬ間際までタバコを吸う」。
私は現在、非喫煙者である。
まだ生きていたいので、タバコはやめた。タバコを吸う人が側にいたら「離れてください」と言ってしまうぐらいだ。
しかし過去を遡れば、10代後半から38歳まで喫煙していた。
その間なんども禁煙を繰り返し、映画『コーヒー&シガレッツ』のトム・ウエイツ論「禁煙しただろ?だから堂々と吸える」に従っていた。
私はマルボロメンソールライトのBOXを好む(正しくはマールボロ)。
タバコの箱にライターを入れる派なので、本当は(ファッション的に)ソフトが良いのだが、タバコが折れるのを防ぐためBOX派だ。
タバコケースは絶対に使わない。
「女ってなんでハッカ(メンソール系のタバコ)が好きなの?」と、柄の悪い知り合いに言われたことがある。確かに女はハッカを好む。
カジュアルな女はマルメンまたはマルメンライト、ギャルはバージニアスリムみたいな細いタバコのメンソール(ブランド物かキティちゃんのタバコケースを使用)、スナック系の女(ケバいけど生活感がある)はセブンスターやマイルドセブンといった日本製のタバコが多い。スナック系の女はハッカは吸わないイメージ。
今は電子タバコが主流だが、一度も吸ったことはない。
(ファッション的に)ダサいと思っている。
それなのに、日本で1番カッコ良いバンドMETAFIVEのメンバーのほとんどが電子タバコを吸っていて、地味にショックを受けた。
私は電子タバコより紙タバコ派だ。
タバコとシャネルの香りが混ざる時
さてここからの話は、私がタバコの味を思い出しながら「あータバコってうまいな」と思う瞬間を書いていく。
先の「ラーメン、餃子、ビール、タバコ」のように、脂っこいものとタバコの相性は抜群だ。今さら、それについては語る必要はないだろう。
一般的に「コーヒーとタバコ」がセットのように思われているが、私はあまり好まない。
逆に、甘いドリンクを飲みながら吸うのがうまい。
単品だったら絶対に飲まない紙パックに入っているイチゴミルクや、甘いカフェオレとタバコの組み合わせが好きだ。
アルコールも同様で、1番好きな組み合わせはゴッド・ファーザー(アマレット×ウイスキー)とタバコ。このカクテルは甘めだがウイスキーの濃厚さもあって、タバコととても合う。そしてすぐに頭が痛くなる。
ガムを噛みながらタバコを吸うのも好きだ。
片方の歯でガムを噛み、もう片方でタバコを咥える。
この時のイメージはもちろん『ナイト・オン・ザ・プラネット』のウィノナ・ライダー。
ミント系より、バブリシャス系の甘いピンク色のガムを噛みながら吸うのがうまい。しかも、噛みたての味がみっしり詰まったガムと、箱から出したばかりのピンピンのタバコとの相性は抜群だ。
この甘さとタバコの相性の良さは、口に含むものだけでなく香りも同様だと思う。
私の大好きな菊地成孔著『スペインの宇宙食』の中で、
<…カチッと音がして、シャネルの香りにマールボロの匂いが混じり出しエンジンの音がします>とある。
この後、夜のドライブへとシーンが進むのだが、車に乗って同乗している女からシャネルの香りがして、その女がマールボロ(きっと赤マルだろう)に火を点け一口吸う。
そしてタバコと女が纏っているシャネルの香りが混ざる。
この文章だけで、その香りが想像つく。そして、どのようなタイプの女なのかも。
ギャルやスナック系の女も、この独特の香りを纏っている。
なんとも言えない、鼻腔にまとわりつく香りだ。一瞬「うっ」と拒否反応が出るのだが、もう一度嗅ぎたいと思わせる癖になる香りだと思う。
やはり、甘さとニコチンの相性は抜群なのだ。
そんな私が上映したい映画は、ウォン・カーウァイの『花様年華』。
どんな映画でもトニー・レオンの喫煙シーンが大好きなのだが、『花様年華』に関しては、先ほど述べたタバコとシャネルの混ざった香りがずっと漂っているイメージ。
マギー・チャンのチャイナドレス姿やメイクも素晴らしい。
しかし、もっとこの映画のことを語ろうとしているのだが、どうやら絵は思い浮かぶがストーリーが全く思い出せない。インスタで『花様年華』のポストをみつけては都度保存しているのに、ストーリーが全く思い出せない。
唯一思い出したことは、『花様年華』って漢字が読めなくて「あの花鳥風月みたいな映画」と思っていたことだけを思い出した。くだらない。
私自身にちゃんとみてほしい。だから今回は2本立てではなく、1本で。
私が喫煙していたら、医者に余命宣告をされたのだと思って欲しい。
そして哀れんだ表情で「大丈夫?」と声をかけて欲しい。
ピンク色のガムを噛みながらタバコを咥え、気怠い表情でこう答えるだろう。
「Yes mam」。
野村訓市へ。
ウィノナ・ライダーは『リアリティ・バイツ』より『ナイト・オン・ザ・プラネット』の方が最高なんだぜ。