Feature

今年も開催!
〈ODD:変〉な学校の文化祭、
妄想文化祭へようこそ
〜前編〜

渡邉慎也

渡邉さんが主催するODD SCHOOL。なんとなく…のイメージを抱いたまま活動を見守っていたが、昨年開催された文化祭、妄想アパートメントをSNSで見てから「団地で文化祭?ただ事ではないな」と思い始めた。次は広瀬団地へ行ってみようと思っていたところ、ありがたいことに出展者として声をかけていただいた。「ODDな学校が団地で文化祭。しかも妄想?」疑問符が飛び交う脳内を整理しつつ、渡邉さんへ質問を投げかけた。

※前編と後編に分けて更新します。前編はODD SCHOOLの立ち上げと11/25に開催される妄想文化祭ついて質問をしました。

表現と共創を目指す〈ODD:変〉な学校ODD SCHOOL

渡邉さんは2019年にODD SCHOOLを設立していますが、立ち上げることになったきっかけを教えてください。

ひとつは僕自身、社会に出てからも生き方で悩むことがあって、そんな時に日常生活を送りつつ、楽しみながら学べる学校があったらいいなと思っていました。

それから*児童自立支援施設の教員時代の体験も影響しています。
*児童自立支援施設とは、家庭や地域に様々な課題をもつ子どもが、寮生活を通して自立を目指す行政の施設。学校に行くことが難しかった子どもも多いため、登校習慣を身につけてもらうため施設内に学校がある

僕はその学校で社会科を専門していました。そこでは授業に乗れず不安定な様子の生徒達と対峙しました。初めて授業崩壊を経験し、自分の無力さを痛感しました。でも、そんな状況にかかわらず、常にワクワクしてしまったんです。

「僕から見えている面白いアレやコレをどうにかして伝えたい!彼等に短い期間で何ができるだろうか」と考えた結果、このネット時代にgoogleで検索できるワードやハウツーを伝えようと思いました。社会に出た時に、調べられたら、知っていたらチャンスが広がるかもしれない。そのためのフックを少しでも多く用意しようと思い、クラファンの仕方やブラックミュージックの歴史背景など、興味を持ちそうな内容を社会と絡めて授業をしました。

そうすると、いつしか生徒から「早く授業やろうぜ」と言い出し、自主勉までするようになりました。ただ、卒業して進学や社会に出ると今までの生活に戻ってしまうことが多い現状はそのまま。そこが課題だと考えていた時に、社会で低い敷居から学び、入り口に立てるセーフティーネットがあればと考え、勢いでODD SCHOOL始めてしまいました。

しかし課題を抱える子どもと関わるには、まだ実力や責任を持てないことが多いため、まずは10代後半の青年期以降の方を中心としたコンテンツ作りに集中し、少しずつ始めることにしています。

ー ODD SCHOOLでは〈ODD:らしさ〉と定義づけていますが、どんな人々が在籍して、どのようなことを学んでいるのですか?

19歳から62歳までの学生やフリーター、大学教授、クリエイターなど70人程が在籍しています。表現をしたい人、みんなで何かを作りたい人、自分のスキルを誰かのために活かしたい人、生き方を見つめたい人。目的はそれぞれですが、共通していることは「より面白い事をしたい!より楽しく生きたい!」と思っている人達です。

ODD SCHOOLは表現と共創の学校を目指しています。学びは大きく2つだと思っています。1つは、自分と他者についてより深く理解を深められるところ。もう1つは、協調性や企画力、デザイン力、営業力など結果的に学べるところ。

ODDは英語で〈不安定な、奇妙な〉といった意味で、どちらかといえばネガティブなイメージを持たれるような単語です。しかし僕は、そこに可能性を見出しました。高校の時に勉強で挫折感を抱いた僕が救いを求めたのは哲学でした。〈美醜〉をテーマに、さまざまな美は醜になり、また滑稽(ユーモア)を伴い美的回帰を果たすといったローゼンクランツ『醜の美学』に希望を抱きました。別の視点で物事をみるユーモア的思考を持つことで、一側面では醜かもしれない自分を、肯定もできるかもしれない。どっちでもあるよ、という意味でODDを〈らしさ〉と定義しましたが、最近は〈ODD:変・個性〉という捉え方をし始めました。

ー 渡邉さんはODD SCHOOLの主催の他に仕事をしているのですか?

普段は前橋市内の小学校で教員をしています。家庭もあるので日中は仕事をし、生活の隙を見てはODD SCHOOLをやっています。時間はかかると思いますが、いずれはODDが仕事につながっていったらと考えています。

ー Instagramに〈禊ガチャ〉という企画がありましたが、このようなこともODD SCHOOLのメンバーたちの企画ですか?

あれは僕がゼミ長をしている『ガチャガチャゼミ』で企画しました。最近、前橋市の街中に県内外からクリエイターが集まっていて面白いのですが、そんな街中で9月に開かれた『SFE(ストリートファニチャーエキシビジョン)』なる、公道に私的な家具を設置する社会実験にODDの『ガチャガチャゼミ』が参加しました。

メンバーを含めた、ゼミ単位での他イベントへの参加は初でした。今までODD単位で動いていましたが、今年度からメンバーが好きなゼミを立ち上げるシステムにしたところ、少しずつゼミ単位での表現活動が見られるようになりワクワクしています。

ODD SCHOOLを主催する渡邉慎也さん

新しい自分を見つける妄想文化祭

ー 文化祭は今年で2回目ですね。学校行事の1つである文化祭に〈妄想〉という言葉が付く理由を教えてください。

「普段何かをやってみたいけど、なかなか一歩が踏み出せない。普段まとっている自分とは違う自分を演じてみたい」。そんな日常から離れて、みんなそれぞれ持っている〈妄想世界(こだわり)〉を出せる1日があったとしたら。その1日をきっかけに何か始まるかもしれない、そんな機会があったらいいなと思って〈妄想〉をつけました。この妄想文化祭が表現を考える中で自分自身を見つめることになると同時に、自分の世界から飛び出して外の世界と触れる越境体験にもつながると期待しています。それはいろんな人が互いにハッピーに生きる上でとても大切なことだと思います。

ー 昨年の文化祭で思い出に残るエピソードがあれば教えてください。

出展者の高校生が言ってたんですが、「変だと思っていた自分が変じゃないんだと思えた。みんな変だから、自分が素でいられた」という言葉が印象的でした。また、区長が「自分が元気なうちにまさかこの団地でこんな景色を見られるとは思わなかった」と言って、強く握手をしてくださったのは込み上げてくるものがありました。来場者の方で「みなさんが思い思いに表現しているのをみて、都内に出ようかと思ったがこの群馬でももう少し自分を表現してみようと思いました」と言ってくださったのが嬉しかったですね。反骨精神で、ここ(群馬)でやっているので。

昨年の文化祭の様子

ー 妄想文化祭に参加することで、メンバーたちの変化は見られましたか?

出展者は自分の表現に自信を持てるようになった人がいたり、文化祭実行委員として出展者のフォローをした人は、次は自分も出展(表現)してみたいと話していましたね。僕が「文化祭をやる!」と言った当初は、みんな「またいつものホラが始まった」と疑い半分でいたのですが、終わってみれば「文化祭、面白かった」と言ってくれて、ODD自体の活動により精力的になってくれる人が増えました。

ー 今年は11月25日に開催されますが、見どころを教えてください。

全体の構図から言えば、昨年はイベントの主催が僕らではなくご一緒させていただいているLIFORT(学生を中心とした団地再生プロジェクト)でしたが、今年は僕らODD SCHOOLがイベントの総指揮を執らせていただくなど、任意団体風情がその位置でやるという社会的なバグが起こっています。

内容を見ると今年は出展者も24から60前後と倍増し、エリアも神社や郵便局、公民館が加わるなどいろんな垣根を超え始めています。また群馬県も出展していただけることになり、ODDの20代の子達と県の秘書課・戦略企画課の方々と合同チームを結成し群馬県のブースを一緒になって作っています。音楽ブースである〈club apartment〉については、昨年の団地部屋から神社境内にエリアを移すなど、皆様のお力添えのもとで少しずつできることが増えてきました。よりチグハグさが増しているので、そういったところも見ていただけるといいですね。

今年の妄想文化祭の詳細はODD SCHOOLのInstagramをご覧ください。

※後編に続く

Creator

渡邉慎也

1990年生まれ前橋市出身。群馬県立前橋高等学校、群馬大学教育学部卒業後、群馬県教師として着任。在職中に文化祭などの表現活動や共創体験から様々な〈ODD:変〉を前向きに捉えより面白く生きるヒントを見つける社会の学校ODD SCHOOLを設立。一旦教員を辞め、ベンチャー企業で新規事業の立ち上げなどを経験したのち、2023年6月から教員に戻って現場で教育を学び直す日々。