25歳の夏、突然上司から「アメリカへ出張に行ってみるか」と言われた僕は、即答で「ハイ」と答えた。小さな頃からアメリカの映画や音楽に夢中だった僕が、憧れの地アメリカに行くと決まってからは、期待半分と不安半分の気持ちで向かう準備をして、いざ自由の国アメリカへと向かった。
僕が向かった先はオハイオ州のクリーブランドという所で、日系の企業が多い少し田舎の町だ。最寄りのコロンバス空港に到着する寸前まで、Beastie Boysの『To The 5 Broughs』を聴いて気分を高めていたことを今でも覚えている。
コロンバス空港に到着すると、そこには少しイナたいアメリカの風景が広がっており、空港から少し車で走るとアメリカの田舎ならではのトウモロコシ畑が永遠と続いていて、ふと映画『フィールド・オブ・ドリームス』を思い出した。そこからは職場とアパートを行き来する生活が始まるのだが、向こうは基本車社会なので自分で車を運転しなければならない。現地の職員に最低限の交通ルールを教えてもらい、ビビりながら車の運転を始めた。
運転してしまえば日本より道幅も広くまっすぐな道が多い為とても運転しやすく、ラジオのインディチャンネルを聴きながらいつも通勤していた。晴れた日にハイウェイを運転しているととても気持ち良く、まるで映画の中に入った気分になれる。
運転して思ったのが道の構造が単純なため、どこへ行くにも迷わず目的地に行く事ができる。そこで僕は週末になると、車で現地のデパートやアウトドアショップなどを巡ってはお土産、洋服、雑貨などを買い漁った。
どのお店でも店員が気軽に話しかけてくるのだが、早すぎて何を言っているのか分からず毎回苦笑いして回避していたが、そんな僕にも永遠と話かけてくるので笑顔で「イェー」と言うしかなかった。
それとアメリカに来て1番ビックリしたのが、アウトドアショップに銃が普通に売っていて、さらに銃の弾が山積みにして置かれていた事だ。そこで銃社会の怖さや、いかに銃がアメリカ人にとって身近なものなのかを感じさせられた。
会社帰りはどこかで夕飯を食べて帰るか、スーパーに買いに行くかの二択だったが、僕はアメリカのスーパーの雰囲気が好きだったのでよくスーパーに寄っては冷凍のピザとマウンテンデューを買って帰った。なぜかアメリカのスーパーではSteely Danがよく流れていたのでSteely Dan好きの僕としては、未だに聴き続けられているのは嬉しかった。
そんな出張も残り少しという時に、地元の野球チームの試合を観に行かないかと誘われた。いざスタジアムに行ってみると、試合が始まる前からビールを飲んで騒いでる人や、顔にペイントした少年が楽しそうに走り回っていた。
試合が始まると全員で一体になって応援するというよりは、個々が応援したいように応援していてそれが新鮮に感じた。起伏の激しい人やカップル同士イチャイチャしながら応援している人など、自分の世界に入って応援していた。
途中地元のチアダンスチームのショーが始まったのだが、全員可愛くダンスもキレキレで試合より夢中になって観てしまった。
特に有名な観光名所巡りや体験をしたアメリカ出張ではなかったが、現地の人のリアルな生活や習慣を体感できた事は、25歳の僕にはとても良い経験だった。そこから年に一度はアメリカ出張に行かせてもらっていたが、毎回新しい発見があり良い事も悪い事も色々経験させてもらった。去年は残念ながら行けなかったが、また「普通なアメリカ」を体感できる日が訪れることを願っている。