去年1年間は色々あった年だった。
BEDROOM RECORDSの開業からコロナ。良いことも悪いことも一気に押し寄せたそんな年だった。
そんな大きな出来事があったなか、自分自身にも大きな出来事があった。
それはバイクを買ったことだ。
ヤマハのセローというバイクで、林道を軽快に走ることのできるマウンテントレールバイクを知り合いからタダ同然で譲り受け、それを直しながら乗っている。前々から林道を走れるバイクをみつけていた自分は、知り合いが譲ってくれると言った時、即答で「譲って欲しい」と言った。
決して見た目はカッコ良くないが、どこか可愛げのあるセローが去年から新しい足となったのだ。
なぜ自分が林道を走れるバイクをみつけていたのかというと、1本の映画の影響がある。
それは『プレイス・ビヨンド・ザ・パインズ』という映画で、公開当時主人公のライアン・ゴズリングがモトクロスのバイクを乗りこなす予告をみて、絶対に行こうと決めた映画だった。
その前に公開した映画『ドライヴ』では天才ドライバーを演じていて、この映画のファンだった自分は、ライアン・ゴズリングがバイクに乗っているだけでみに行く理由になったのだ。
都内では早めに公開されていたが、地方では少し遅く公開されたため期待度も高まっていた。
そしてついに群馬県高崎市にある「シネマテークたかさき」で公開され、すぐさまみに行った。友だちと2人で行ったのだが、帰りの車中ずっとこの映画の話をしていたのを今でも覚えている。
映画自体とても面白かったのだが、とにかくバイクに乗るライアン・ゴズリングがカッコ良く、全身タトゥーにメタリカのバンTを着て軽快にバイクを乗る姿に衝撃を受けた。それだけ聞くと、とてもくどい主人公の様だがポーカーフェイスのライアン・ゴズリングがクールな喋り口調で演じているため、男女問わず心惹かれる役になっている。
この映画の中では基本バイクシーンはスリリングな場面が多いのだが、時折夜道や森の中を走るシーンが出てきて、それがとても気持ち良さそうにみえた。
自分が知る限りあんなに気持ち良さそうにバイクに乗る映画は無く、実際にバイクに乗っている人ならきっとあの感覚が分かるだろう。
そして、この映画をみ終わってからモトクロスのバイク探しが始まるのだが、その直後に自分はスズキのジムニーという車を手に入れ、林道を走ることに夢中になる。それから3年ほどジムニーで林道を走っていたが、あまりに悪路を走行していたせいで車の調子が悪くなり手放すことになってしまう。
ジムニーを手放してからは山に行くことも減ってしまっていたが、去年セローを手に入れてたことでまた山に向かう日々が始まった。
車と違いバイクでは全てが直接的に感じることができる。
路面の感触、木々の匂い。
夏でも山奥は少し肌寒く、それがとても気持ち良い。
車では走れないような道もバイクなら入って行け、野生動物の足跡や少し危険な道なども入ってみたりした。
ケータイの電波などもちろん入らないので、ふとここで転んだら死ぬんだろうなと思ったりもする。
なぜ山を走りたくなるのかは、普段感じることのできないスリルを感じることができるのと、大自然の中で、自分とバイクだけという究極の孤独感を感じることができるからだと思う。
そして、何よりあの日みた映画の中のライアン・ゴズリングに魅了されたからだろう。