Column
いるのにいないだれか 3
―曖昧な―
私は前かがみの体勢のまま上瞼をぐっと引き寄せてカオルの目を見た。カオルも私の目を見ていた。了解。まばたき。
私は前かがみの体勢のまま上瞼をぐっと引き寄せてカオルの目を見た。カオルも私の目を見ていた。了解。まばたき。
夢の中の私は、まだ20年前の姿のままで、見覚えのある景色は、以前、夢で見ていたあの村の景色だった。
まばたきを終えると、目の前の青い塊の解像度が上がった。
しとしと雨が降っている。この街では雨は日常的で、降ったり止んだりしているから、傘を持ち歩く人は少ない。
「ヤギオ」私は背後からの突然の声に驚いて、すぐに後ろを振り返る。そこに立っていたのは、1人の女性だった。
また、夢をみた。私は北関東のとある地にたどり着いた。
夏の強い西日は夕日へと変わり始めていた。空は刻刻と明るさを失い、外の木々が長い影を落としている。掃き出し窓を突き抜けて、地続きに木陰を作り、建物の中と外の境界はなくなっていた。
毎回、番外編のような特別編のようなことになってきてしまったが、書かなくてはならないタイミングというものがあるので、今回は映画『ドライブ・マイ・カー』を観た感想を記す。
毎号、ストイックにお笑いについてコラムを書き続けているボンジュール古本。たった一度だけ、オープンしたことがある古本屋だ。